弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

療養看護(介護)の寄与分の実状

2020年11月04日 相続

1 「寄与分」という制度をご存知でしょうか。ある相続人が被相続人の財産の維持等について特別の寄与をした場合に、公平の観点から、遺産から寄与分を控除した上、その相続人の具体的相続分に寄与分を加えることで各相続人が取得する財産の金額を調整する制度です(民法904条の2)。なお、相続法改正で新設された、相続人以外の親族が特別の寄与をした場合の制度については、202041日付コラム「特別の寄与の制度」をご参照ください。

2 一般に寄与の態様として5つの類型があるとされています。

① 家業従事型(被相続人が営む事業に従事する場合)

② 金銭等出資型(被相続人に財産を給付する場合)

③ 療養看護型(病気療養中の被相続人の療養看護を行う場合)

④ 扶養型(被相続人を継続的に扶養する場合)

⑤ 財産管理型(被相続人の財産を管理する場合)

 寄与分が主張される事案の多くは複数の類型に当てはまります。例えば、相続人が認知症の被相続人の家計を管理し介護に従事しながら入通院代も援助していた場合には、②金銭等出資型、③療養看護型、④扶養型の3類型に当てはまるといえるでしょう。

3 直近の統計(2018年10月1日時点)では、国内の65歳以上の人口は3,558万人に及び、総人口に占める割合は28.1%となっています。今後も高齢化率は増加傾向が続くものと見込まれています。高齢化社会が進む中、遺産分割の事案ではとりわけ療養看護型(③)で深刻な争いに発展する事案に出会うことがあります。

4 特定の相続人(A)が被相続人と同居し昼夜看護に努める一方で、別居する他の相続人(B)は被相続人とほとんど関わり合いをもたなかったという昨今往々にして見受けられる遺産分割の事案では、Aは自分が身を粉にして看護に徹してきたと寄与分を主張し、BAの看護はそれほど大変なものではなかったと寄与分を否定し、寄与分がそもそも認められるのか否か、あるいは寄与分の額が争われます。

 寄与分が認められるためには「特別」の寄与(被相続人との身分関係に基づき通常期待される程度を超える寄与)が必要とされており、「療養看護の必要性」「特別の貢献」「無償性」「継続性」「専従性」という要件から判断されています。意外と知られていないのが、要介護度2以上の状態であることが目安とされており、要支援または要介護1の場合にはそれだけで特別な寄与に該当しないと判断されることも少なくありません。

 寄与は主張するだけでは足らず立証する必要があります。もっとも、それは容易なことではありません。長い年月にわたり家庭内という密室の空間で行われてきた看護の苦労やエピソードを、体験してこなかったBあるいは(遺産分割調停の場合は)裁判官と調停委員に一から説得的に伝えなければなりません。しかし、看護が日々どのようなものであったかを逐一具体的に介護日誌等に記録している方はほとんどいないでしょう。

 それでも寄与分を認めてもらうためには、要介護認定の資料、介護サービス利用票、カルテなどの資料から被相続人の心身の状況と推移をまず明らかにした上で、どのような看護が当時必要とされていたかを浮かび上がらせる必要があります。

 なお、介護の寄与分が認められたとしても、当事者が想像(主張)するよりもはるかに金額が低く算定されることも珍しくはありません。


4 介護の寄与分を主張立証する作業過程は大変です。できる限り多くの資料を作成・保存しておくことが強く推奨されます。

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