弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

民事執行法改正により養育費が取り立てやすくなる!?

2020年08月03日 離婚

1 これまでの問題点

 離婚の際に養育費の取決めをして,公正証書や裁判所での調停調書に残せば,仮に元夫(元妻)が養育費を支払わなかった場合,養育費を支払わなければいけない元配偶者の給与を差し押さえることができます。

 しかし,元配偶者が,転職をして勤務先がわからなくなってしまった場合,これまでの制度では,裁判手続上勤務先を特定する制度はなく,せっかく公正証書や調停調書を作成したのに,養育費がもらえないというケースが多くありました。

2 民事執行法改正の内容

 令和元年5月19日に国会で成立した民事執行法改正法では,元配偶者の勤務先が分からなくなっても,養育費に関して取決めをした公正証書・調停調書・判決書等があれば,裁判所を通じて市区町村又は日本年金機構や国家公務員共済組合などの厚生年金保険の実施機関から,勤務先の情報を取得することが可能となりました。

3 どういう手続なの?

 裁判所を通じて市区町村又は日本年金機構等からの情報取得ができる債権者は,「養育費や,人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権を有する債権者のみ」すなわち養育費債権者と犯罪被害者や交通事故等の被害者のみに限定されています。したがって,公正証書や調停調書を作成する際には,「和解金」や「支援金」といった名目にしてしまうと,この制度が使えない可能性があるので,注意が必要です。

 次に手続について説明します。

 裁判所を通じて市区町村又は日本年金機構等から情報取得手続をするためには,債務名義の執行文を得た上で第三者からの情報取得手続をする必要があります。そして,第三者からの情報取得手続をするためには,①強制執行又は担保権の実行における配当等の手続(申立の日より6月以上前に終了したものを除く。)において,申立人が請求債権(執行債権)の完全な弁済を得ることができなかったとき(民事執行法197条1項1号),又は②知れている財産に対する強制執行を実施しても,申立人が請求債権の完全な弁済を得られないことの疎明があったとき(民事執行法197条1項2号)が必要となります。

 したがって,基本的には強制執行等の手続をしたうえで,さらに裁判所に対して元配偶者の勤務先の情報の取得する手続を申し立てることになります。

 市区町村又は日本年金機構等が元配偶者の勤務先の情報を提供することは,元配偶者にとっては不利益な処分にあたりますので,裁判所から元配偶者に対して,情報が提供された旨の通知がいきます。したがって,元配偶者の勤務先の情報を取得した場合には,その後の強制執行は速やかに行う必要があります。

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