弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

「遺言」を作っておきなさい。

2008年08月01日 遺言

1.「民法」について

「相続」や「遺言」については、「民法」という法律に定めがあります。
そのことは、ほとんどの人が知っていると思います。

ところが、「民法に定めてある」ということがどういう意味を持っているかということについては、誤解している人が少なくありません。
「私の遺産の分け方は、民法の定めのとおりにしなければいけないのだ。」と思っている人、「民法の定めがあるから、遺言を作っておかなくても、私の遺産は民法の定めのとおりに分けられるはずだ。」と思っている人、これらは、いずれも間違いです。

人間は、自分の持っている財産を好きなように処分できます。
これが大原則です。

遺産の処分(自分の死後、自分の財産を、誰に、あるいは誰と誰にどういう割合で残してあげるかということ)は、財産の処分の一つであり、この大原則から、「遺産の処分は、本人が自由に決められるものだ。」という原則が出てきます。
但し、これは原則であり、具体的には、「遺留分」の定めがあるなど、若干の制約のあることは承知しておいてください。

現実問題として、ある人が死亡した場合、その人の遺産の分け方がどのようにして決まるのかは、次のとおりです。

 本人の、有効な遺言のある場合は、その遺言のとおりになります。

 ①の遺言が無ければ、故人の法定相続人(どのような場合に、どういう立場の人が法定相続人になるかは、民法で決められています。)の全員が話し合い、その話し合いがまとまれば、そのとおりになります。
この場合、法定相続人でない人は、誰であろうと、全く発言権がないということが重要なのです。

 ①の遺言がなく、②の話し合いもまとまらなかったら、公的機関(つまり、家庭裁判所)に、調停・審判・裁判を申し出て、具体的な分け方を決めてもらうしかありません。
家庭裁判所は、「まず当事者で話し合って決めませんか」とすすめますが、当事者の話し合いがまとまらなければ、最終的な判断(「判決」です。)をします。そして、その判決は、特別の事情がない限り、民法の定める遺産の分け方(「法定相続分」といいます。)のとおりになります。

   ここでやっと民法の相続分の定めが姿を現すのです。
言い換えれば、民法の相続分の定めは、家庭裁判所が判決を出さなければならなくなった時に備えて、「家庭裁判所が判決をする場合は、こういうように判決しますよ。」ということを、事前に国民に示しているだけなのです。

   「民法」の相続分の定めのとおりに遺言しなければならない訳ではありませんし、その定めのとおりに分けなければならないものでもありません。
自由に決めていいのです。
また「何もしなくても民法の定めのとおりになる。」と思ったら大間違いです。
御本人の希望通りに実現したいのなら、是非とも遺言 を作っておいてください

2.「遺言」について

ここまで述べたところで、「遺言」を作っておいた方が良いことは、十分理解できたと思います。

特に、次に述べることにあてはまる人は、必ず作っておくべきです。

 法定相続人でない人(世話してくれたくれた息子の嫁、仲が良かった遠縁の人、親友など)や団体(地方公共団体、母校、赤十字など)に、自分の遺産の全部又は一部を残したいと考えている人。

 子供がいないから、自分の死後は自分の財産をすべて配偶者に残し、その生活を安定させてやりたいと考えている人。
(遺言がなければ、遺産の一部は、親・兄弟姉妹・甥姪に行くことになりかねません。)

 子供たちのうち、家業を継いでくれた子供とか自分の老後の面倒をみてくれた(みてくれる予定)子供に、他の子供よりも沢山遺産を残してやりたいと考えている人。

 自分の死後、身内の間で財産争いの醜い紛争が起こらないようにと、強く願っている人。

遺言を作る手続き、必要書類などは、市役所(役場)の人、弁護士、司法書士、公証人などと相談してください。

3.結論

これまで述べたところに同感な人は、是非遺言を作っておいて下さい。

忠告を一つ、二つ。

「うちの子に限って」はダメ。いざその場になったら、人間は極めてあさましくなります。

「善は急げ。思い立ったが吉日」です。
作るつもりでいても作っていなければ何の役にもたちません。
交通事故にあったりしたら、作りたくても作れなくなってしまうのです。

                                              以上

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