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納得できない遺言書について

2008年03月01日 遺言


相続に関するご相談では、被相続人が亡くなられた後になって初めて遺言書の存在や内容を知った相続人の方からのご相談を受けることもあります

    被相続人の方が本当にそのような遺言書を書いたとは信じられないという相談や、遺言書の内容があまりに不当だといった相談があります。
例えば、次のようなものです。
①死後何ヶ月も経って始めて、公正証書遺言があるといってコピーを渡されました。
入院してた母が遺言できたはずがない。
内容もあまりに不平等なものです。

②遠方に住んでた三男が、父の自筆証書遺言の検認を申し立てました。
ここ数年父はほとんど字を書くこともできなかったはずですし、親族会社の株式の過半数が三男のものになる内容は、父の遺志だったはずがありません。

①の公正証書遺言は、証人立ち会いのもとで、本人が話した内容に基づいて公証人が作成する方式の遺言書です。
公正証書作成当日、本人が公証人に対し「口授」(口頭での説明)することが要件とされており、これがない場合、公正証書遺言は無効となります。
公証人が作成する公的な文書を示されると、あきらめてしまう方も多いと思いますが、実際には本人の意思能力の確認が不十分なまま、本人からの口授も不完全な状態で作成されてしまうことがあります。
裁判上も、被相続人の意思能力の無い状態で作成されたものであるとの理由や、単に聞かれたことに肯定・否定の挙動を示しただけで口授が行われていなかったといった理由で、公正証書遺言の効力が否定された事案も見受けられます。
意思能力・口授の有無については、当時の医師の診断内容や、当時の本人の言動・健康状態、遺言内容の複雑さ・合理性、遺言書作成の経緯などの諸事情から総合的に判断されることになりますので、簡単には判断できない場合がほとんどです。
疑問がある場合には、弁護士会家庭法律相談センターなどで専門の弁護士に相談してみることをお勧めします。

②自筆証書遺言は、本人が全文を自筆で書く方式の遺言書です。

自筆かどうかが争いとなった場合には、話し合いで解決できない状態となっていることが多く、裁判で争われたケースが多数存在します。
自筆かどうかの判断については、ご本人が証言できない以上、専門家による筆跡鑑定が必要となります。
遺言書と、被相続人の自筆に間違いのない文書とを対比して鑑定を行うことになりますが、巧妙に自筆をまねた可能性がある場合、実際上は筆跡鑑定だけで結論を出すことは困難となります。
意思能力が問題となる場合と同様、やはり遺言書作成当時の本人の生活状況や、遺言内容の合理性、遺言書作成の経緯などといった諸事情から検討してみる必要があります。

少しでも疑問があれば、一度弁護士会家庭法律相談センターなどで専門の弁護士に相談してみることをお勧めします。
なお、自筆証書遺言の場合、家庭裁判所での検認手続が行われますので、これに呼び出されて初めて遺言書をみることになったという場合もあると思います。
認手続は、検認の日における遺言書の内容を明確にしておくことが目的の手続ですので、自筆かどうかの実質的な判断につながるものではありません
検認手続で本人の自筆だと答えてしまったとしても、手遅れということにはなりません。

以上

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