弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

こんなときに必要な遺言書

2007年07月01日 遺言

 遺言書の役割
 遺言書は被相続人の意思表示です。
  本来、財産をどのように処分するかは、生前はその人の自由な意思に委ねられています。
 
そのため、死後も自由に財産を処分できるはずです。このような、被相続人の財産に関する意思を実現するものが遺言書です。

 遺言書がないと困る場合
 遺言書の作成は、欧米では日常的に行われていますが、日本人は、遺言書の作成を嫌う傾向にあります。自分の死後のことを考えたくない日本人の気質が影響しているものと思われます。
 しかし、遺言書がないと非常に困る場合があります。
 例えば、法定相続人の一人が行方不明のような場合、あるいは妻と離婚の裁判を争っているような場合です。

 相続財産に不動産がある場合に、相続人の一人が行方不明のような場合には相続登記ができないことになります。そのため、不動産の登記は被相続人名義で残り、不動産を処分することも担保に入れることもできません
 預貯金についても、預金等の払戻手続には原則として相続人全員の印鑑証明書が必要であることから、預金の払戻ができないことになってしまいます。

 また、夫が、妻と離婚裁判中に死亡したときには、離婚はできなくなり、夫の財産を相続することになります。離婚が係争中であることを理由に、法律上相続を拒否することができません。
  そのために、夫の財産が、本来は離婚を望んでいた妻の手に渡ってしまいます。

 この他に、自分名義の不動産を処分せずに保有して欲しいような場合にも、遺言は必要です。
 このように、子孫に大切な財産を円滑に残すために、遺言は必要な制度なのです。遺言書の作成が必要かどうか一度検討されることをお奨めします。

 公正証書遺言
 遺言書には、大きく分けて自筆証書遺言と公正証書遺言があります

  自筆証書遺言は、一人で作成でき、費用もかかりません
 
しかし、記載内容が十分に特定されていないことから、遺言書としての効力が認められないことが多いのが現実です。例えば、不動産の場合には、住居表示にしたがって記載しても、不動産の特定が十分でないために登記ができない可能性もあります。不動産の登記簿謄本を見て、記載する必要があります。また、株式や預貯金についても、特定の必要があります。
 しかも、死後庭裁判所で検認の手続が必要です。

 検認の手続では、相続人全員に通知する必要があります。検認をしても、後に被相続人の筆跡かどうか争われることもあります。
  このように、自筆証書遺言は、残された相続人にとっては処理に時間と手間がかかるものです。

 公正証書遺言は、公証人役場で作成する遺言書です。
 
作成に手間と費用がかかりますが、記載内容が無効となることがなく、遺言書が紛失する危険性もありません。
  また、公正証書遺言に基づき、他の相続人の協力なしに不動産の登記名義を変更することができます。

 そのため、遺言書を残すのであれば公正証書遺言が望ましいことになります。

 遺留分との関係
 民法は、配偶者及び子供の相続分を確保するために、法定相続分の2分の1を遺留分と定めています。
 
遺留分とは、被相続人による財産処分を制限して、一定の相続人に留保することが保障された相続財産の一部です。ただし兄弟姉妹の相続人には遺留分はありません。

遺留分を侵害する遺言も有効ですが、留分は請求されるとその分は請求した相続人に引き渡す必要があります。
  法律上、相続人の権利として保障されているために、遺言書でも遺留分の権利を奪うことはできません
 寄与分と遺留分の関係が問題となりますが、一般的には遺留分が優先すると考えられています。

しかし、遺留分権利者から請求されなければ、応じる必要はありません。請求できる期間は、相続開始を知ったときから1年です
 遺留分は、相続開始前に放棄することができますが、家庭裁判所の許可が必要です。正当な理由なしに遺留分を放棄することは認められていません。
 
 また、相続開始後に、自己の相続分をゼロとして遺産分割の協議をすることもできます。
 
これは遺留分の放棄ではなく、遺産分割の合意に基づくものと考えられて います。相続財産を取得するかどうかは、相続人の自由な意思に委ねられているからです。

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