弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

遺留分ってなんだ?

2017年09月29日 相続

 「いりゅう」と言えば日本の医療を題材とした漫画やドラマを思い浮かべる人も少なくないかもしれませんが、今日触れるのは「遺留分」です。

 「遺留分」って言葉、なんとなく聞いたことはあるかな~という人もいるかもしれませんが、具体的には何なのかを理解している人は多くないと思います。

 まず、「遺留分」とは、一定の相続人に法律上確保された最低限度の財産のことをいいます。人が亡くなると「相続」が生じ、亡くなった人は「被相続人」となりますが、被相続人は自身の財産を遺言等によって誰にどれだけ相続させ、また相続させないのかを指定する権利があります。

 他方、相続をすることは、被相続人だけではなく相続人自身の権利でもあります。ですから、被相続人が相続人の権利を完全に奪おうとしても、一定の相続人については、その最低限の権利を保護しようというものが「遺留分」なのです(民法1028条)。

 では、「遺留分」の割合はどの程度なのかについてみていきましょう。

 具体的には、相続人が尊属、親や祖父母のみである場合には被相続人の全財産のうち3分の1が(同条1号)、それ以外の場合には被相続人の全財産のうち2分の1が遺留分とされています(同条2号)。ここでいう「被相続人の全財産」を基準とした遺留分は共同相続人全体の遺留分であり、それを法定相続分に従って分割したものが個人の遺留分となります。

 例えば、被相続人であるAさんに、妻のBさんと子のCさんとDさんがいる場合、Bさんの遺留分は1/2(遺留分)×1/2(法定相続分)=1/4、CさんとDさんの遺留分は、それぞれ1/2(遺留分)×1/4(法定相続分)=1/8となります。

 この「遺留分」は、相続人自身の意思とは無関係に、権利として当然に発生します。しかし、実際の遺留分を取得するには、遺留分を侵害している者に対し、実際に請求する必要があります。これを「遺留分減殺請求」といい、原則として、相続の開始と減殺すべき贈与や遺贈があったことを知ったときから1年以内に行使する必要があります(民法1042条)。

 この「遺留分」について争いが生じる場面の典型例としては、「被相続人が遺言で愛人に全財産を遺贈してしまった」というようなケースです。しかし、実際には「遺言によって、複数いる相続人のうちの1人に全財産を相続させる」ケースや、逆に「遺言によって、複数いる相続人のうちの1人に一切の財産を相続させない」ケースなどが多いように思われます。

 また、遺留分減殺請求は、原則としてそれをすることができるときから1年以内に請求しなければならないにも関わらず、遺留分減殺請求を知らなかったり、親族間での争いを忌避するために請求をためらったりしているうちに、請求権の行使ができなくなってしまうということもよく起こります。

 他方、この請求の意思表示は、先の典型例などにおいて、遺贈の効力を争わないことを前提に遺産分割協議を申し入れた場合には、遺留分減殺の意思表示が含まれていると解されるとされており(最高裁平成10611日判決)、必ずしも請求権行使の意思表示を明示していなくとも、意思表示をしたと言える場合もあり得ます。とはいえ、逆に生前贈与等の効力を争っているような場合には、遺留分減殺の意思表示を否定した裁判例も散見されるため、実務上は予備的に遺留分減殺請求の意思表示をしておくのが通常です。医療ドラマの方も医療の専門家の奮闘が描かれていますが、遺留分をめぐって弁護士も奮闘します。

 遺留分は相続人自身の大切な権利ですから、万が一の事態を想定して、自分にとって不利益な遺言や遺贈がある場合には、弁護士にご相談されることをお勧めします。

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