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預貯金債権の遺産分割に関する最高裁の判断

2017年03月01日 相続

平成28年12月19日,最高裁判所の大法廷は,従来の判例を変更し,「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となる」と判示しました。この最高裁決定は,遺産分割実務上重大な意味を持っているのですが,ピンと来ない人もおられると思うので,簡単にご説明致します。

【事案の概要】

被相続人Aが死亡し,その相続人は,被相続人Aの養子Xと被相続人Aの養子B(Aより先に死亡)の子Yの2人。Aは不動産(約260万円相当)と預貯金債権(約3800万円)を有しており,XとYとの間で本件預貯金を遺産分割の対象に含める合意はされていませんでした。また,Bは生前,Aより5500万円の贈与を受けていました。本件は,Xが遺産分割の審判において,預貯金債権も遺産分割の対象となるよう求めたものです。原審は,本件預貯金は,相続開始と同時に当然に相続人が相続分に応じて分割取得し,相続人全員の合意がない限り遺産分割の対象とならないとしたため,Xが許可抗告を申し立て,最高裁に判断が求められました。最高裁は,上記のような判断をして,審理を原審に差し戻しました。

【最高裁決定の意義】

本件のXにしてみれば,Y(の親B)はAの生前に5500万円も贈与を受けているのだから,Aの相続では,Yの受けた生前贈与の半分の額2750万円くらいは,預貯金債権3800万円から優先して払い戻しを受けたいところ。しかし,預貯金債権は当然に分割承継されるものとすると,預貯金債権は,XとYに1900万円ずつ当然に承継され,Yとの不公平分はせいぜい不動産260万円相当の限りでしか回収できないことになります。ところが,今回の決定によれば,不動産260万円,預貯金3800万円,特別受益5500万円の合計額が遺産分割の対象額となり,Xの取り分は4780万円。少なくとも,不動産と預貯金債権の合計額4060万円を優先して取得できることになります。

私もよく似た事案に接したことがございましたので,もっと早くこの際高裁決定が出ていればなぁと新聞を見て思ったのでした。

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