弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

山林の相続

2017年01月05日 相続

「うちには相続でもめるような財産なんてない。相続なんて、いざという時になってから周りの人に聞いて手続すれば何とかなるよ。」と思っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ところが、実際には、なかなかそうはいかないことも多いものです。今回は、地方にある山林の相続を題材に、早めの法律相談が有効であるケースをご紹介します。

Aさんは、地方で生まれ育ちましたが、現在は東京圏へ出てきて暮らしているとします。故郷の実家には愛着があるけれども、帰ることができるのは盆暮れ正月ぐらい。一方、地方の実家に住んでいる、Aさんの父であるBさんは、X山の一部を所有しているものの、ここ20年間、そのX山には行ったことがないとします。Aさんは、Bさんの法定相続人として、将来的に、X山の土地所有権を相続することが想定されます。このような地方にある実家の相続は、いずれ何とかなるだろう、あるいは、今は考えたくないということで後回しになってしまいがちです。しかし、後回しにしていくうちに、様々な問題が発生し得ます。いくつかをご説明しましょう。

第1に、地方にある実家の相続については、相続財産自体がわからないということがあり得ます。今回のケースで言えば、山林の場所自体がそもそもわからないということが、現実には起こり得るのです。

21世紀の世の中で、そんなばかな、地図があるじゃないかとお感じになるかもしれません。しかし、地方の山林の場合、詳細な地図にさえ掲載されていないこともあり得ます。たとえ「X山」と呼ばれている山が存在したとしても、その山が地図に掲載されているとは限らないのです。そもそも、どのあたりにX山があるのかわからなければ、地図のどの部分を見ればよいのかもわからないのです。市役所の担当者に尋ねたとしても、「この辺ではないかと思われますが、どこかは詳しくはわかりません。」という旨を回答されてしまう場合もあり得るのです。

もちろん、父であるBさんがX山の場所を記憶している場合、Aさんは場所を聞き継ぐことができるかもしれません。しかし、20年間もX山へ行っていなかったため、父であるBさんもX山の具体的な場所はわからなくなってしまった場合、あるいは、X山のことを聞く前に相続が開始してしまった場合、Aさんが自らの力でX山を見つけ出すことは、かなり困難となってしまうかもしれません。

第2に、隣接所有者との境界問題があります。

「X山はこの山だ!」と確定できたとしても、安心はできません。なぜなら、実際に、X山の中に入ってみたとして、どこからどこまでがBさんの所有山林であるかどうかは、登記、地図、公図だけからは、確定困難だからです。都内市街地であれば、目印となるビルや道路がたくさんありますので、それらの目印を手掛かりとして地図によって位置を確定することは比較的容易です。しかし、山林中には、必ずしも目印があるわけではありません。境界線があるとも限りません。どこの木までがBさんの土地上のもので、どの木からが他の方の土地上のものであるかも、判然とするとは限りません。山中を歩き回るのも一苦労です。そうすると、たとえ権利を持っているとしても、具体的にどこからどこまでの土地の所有権を持っているのか、山の中でわからなくなってしまうのです。

また、X山におけるBさんが所有する土地の隣接地を所有しているSさんが、Bさんの所有地上に植林し、あるいは、勝手に道をつくり、Bさんの所有地を侵犯しているかもしれません。たとえ、隣接地の所有者Sさんが、自己の所有地でないと知った上でBさんの所有地を侵犯していたとしても、取得時効によって、その土地が隣接地の所有者Sさんのものとなってしまうことはあり得ます。その場合、Aさんは、相続財産となるはずであった財産を失うこととなってしまうのです。

第3に、相続後の山林管理の問題があります。

具体的に、どこからどこまでがBさんの山林所有地だと判明し、無事にAさんが相続をしたとしても、Aさんはまだ安心できません。なぜなら、相続後の管理にも気を付けなければならないからです。AさんがX山の土地を相続したとしても、東京圏で暮らしているAさんは、めったにX山を訪れないでしょう。そうしてX山の土地を放っておくうちに、土砂崩れが起こってしまうかもしれません。また、キノコ採りを趣味とする民間人が、勝手にX山に入り、キノコを採り、ゴミを不法投棄してしまうかもしれません。さらには、X山の相続した土地へ第三者によって勝手に危険物が投棄されてしまい、その危険物によって散策に来ていた方が怪我をしてしまった場合、Aさんが管理責任を問われかねません。

このように、山林の相続にあたっては、放っておくと様々な問題点が生じ得ます。Aさんが御自身だけでそれらの問題点に対応するのは、大変なことでしょう。

早期に弁護士に相談をすると、弁護士が、市役所、法務局、森林組合等へ連絡を取ることで、各種図面を取り寄せ、さらに各関係者への調査を行い、X山を見つけ出すことができる可能性があります。

また、隣接地所有者との交渉も、弁護士が行うことができます。

さらに、山林の管理にあたっても、Aさんに可能な限り法的責任が及ばないようにする対策案を弁護士はアドバイスすることができます。

山林の相続に限らず、実家の相続にあたっては、早期対策が有効です。家庭法律相談センターの弁護士その他の専門家に早めに相談する機会を御活用ください。

以  上

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