弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

多額の負債を負う人が死亡した場合の相続

2016年11月01日 相続

Q:父が亡くなり、債務の方が多いかもしれないのですが、どうしたらよいでしょう。

A:

1 相続放棄をする途

あなたはお父様の相続人に当たります。お父様の財産状況をしっかり調べて、資産より債務の方が明らかに多ければ、相続放棄をするとよいでしょう。相続開始を知った時から3カ月以内に家庭裁判所に行き、相続放棄する旨を申述することになります。相続放棄をすれば初めから相続人とならなかったものとみなされます。すなわち、あなたはお父様の資産を承継できませんが、債務を承継させられる事態を防げます。3か月以内という短い期間では調査困難な場合もあるでしょう。家庭裁判所に請求すれば、伸ばしてもらえる可能性もあります。

2 限定承認をする途

  1. 限定承認とは

一方、プラス財産の範囲内で相続するという制度もあります。限定承認といいます。お父様の死亡時に負うマイナス財産たる「債務」が、お父様の有するプラス財産たる「資産」より多い場合、プラス財産の範囲内で責任を負いますという留保をして、相続を承認するという制度です。この場合、原則3か月以内に、財産目録を作成して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨を申述する方式をとることになります。ただ、限定承認するには、ネックがあります。共同相続人が足並みを揃えて全員で限定承認を行う必要があるということです。もっとも、相続放棄した人はそもそも相続人になりませんから、相続放棄した人の意向は関係ありません。

  1. 手続きについて

限定承認の手続きをみてみましょう。

まず、相続人が1人のケースでは、限定承認した相続人が相続財産を管理する立場になります。相続人が複数いて足並みを揃えて限定承認するケースなら、その中から相続財産管理人が家庭裁判所により選任されます。まず、官報に公告して、お父様のすべての債権者(相続債権者といいます)及び遺贈を受けた者(受遺者といいます)に対して、請求申し出をするよう知らせます。知れている債権者には個別に催告する必要があります。そして公告期間満了後、届け出ていた相続債権者に債権額の割合に応じて弁済します。ここで余りがあったら、受遺者に弁済します。弁済するといっても、例えば固定資産しかなければ、換価して、弁済原資にする必要があります。なお余りがあった場合、新たに名乗りを上げた知られざる相続債権者が現れたときは、その人に弁済する必要があります。さらになお余りがあれば、初めて相続人が相続する。以上が民法の定める原則です。不当な弁済をしたりすれば、限定承認者は損害賠償責任を負います。

3 みなし単純承認にご注意

ちなみに、みなし単純承認になっていないか、注意していただきたいところです。限定承認や相続放棄をする人が、事前に相続財産を処分、または事後であっても相続財産の隠匿・消費、目録への悪意での不記載といった行為をすれば、その人は、相続放棄や限定承認のメリットを享受できないのです。相続を「単純承認」したとみなされてしまうためです。すなわち、お父様の債務を無限に負うことになるということです。

4 早いうちに弁護士にご相談を

相続財産の調査や管理を適法・適切に行わないと、上述の通り、痛い目に遭います。そこで、早いうちに弁護士に相談されるとよいでしょう。たとえば限定承認をする場合でも、弁護士を任意代理人に選任して、相続財産の管理を代理してもらうことができます。限定承認では税務上考慮すべきことなどもあります。できることなら前倒しで、相続する前のタイミングで、相談されるとスムーズでしょう。

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