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限定承認はお得?

2016年05月02日 相続

  相続が発生した時、多くの方は法定相続により相続財産を引き継ぎ、明らかに借金が多いケースでは相続の放棄をされることになります。問題は財産もあるが借金もある又はあるかもしれないようなケースです。民法はこのような場合、限定承認という制度を用意しており、限定承認は相続財産の範囲で借金を返済すれば足りますから、相続人固有財産から支払いをする必要はありません。このように限定承認は合理的な制度ではありますが、手間がかかり費用も相当かかる制度だということを理解しておく必要があります。したがって、限定承認をする場合には、この手間と費用を考えておかないと、こんなはずではなかったということになります。では、限定承認はどのように手間と費用がかかるのでしょうか?

   まず、限定承認をするには、家庭裁判所に限定承認の申立をすることになります。問題はこの先です。限定承認は相続財産の範囲で債権者に弁済する制度ですから、相続財産の確定と債権者の確認及び告知が必要になります。債権者の確認及び告知は官報に限定承認があったことと債権者の探索の公告をする必要があり、この手続は裁判所が行うのではなく限定承認をする方(相続人代表者)が官報取扱所に出向き公告の申込をする必要があります。破産のように裁判所がやってくれるわけではありません。その費用も数万円かかりそれも限定承認をする方の負担になります。この手続を怠ると、後に限定承認の瑕疵ということで争いがあれば限定承認の効果が認められなくなります。なお、この債権者の探索等の手続は民法所定の数ヶ月の期間がかかることになります。

   では相続財産の確定はどのように手間等がかかるのでしょうか。相続財産が預貯金のような計算上明らかな場合は問題ありませんが、問題は相続財産が不動産の場合です。この場合、不動産を競売に付して換価する方法もありますが、それは手間と費用等がかかりますから、鑑定人により不動産を評価したうえ相続人がその不動産を取得し、その取得代金を債権者への弁済に充てるということになります。ただ、この場合でも裁判所に鑑定人の選任を求める必要があり、鑑定費用も相続人の負担になります。不動産の規模にもよりますが、一般の住居であれば20~30万円から50万円程度の鑑定費用がかかることになると思われます。規模が大きければもう少しかかるかもしれません。ですから、限定承認をする際、不動産がある場合には鑑定費用を考えておく必要があります。加えて、以上のような一連の手続は個人の方には難しい手続ですので、事実上弁護士に依頼する必要がありその弁護士費用も考えておく必要があります。

   以上述べましたように、限定承認は手間と費用がかかる制度ですから、安易に限定承認をすることには慎重な考慮が必要です。逆に言えば、弁護士としても、安易に依頼者に限定承認を勧めることなく、その利害得失を説明する必要があります。

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