弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

相続人が見つからない、いない場合の遺産の行方

2015年09月01日 相続

1 相続事件で生じる問題として弁護士にご相談があるケースは、遺産の分割方法をめぐって相続人の方々の意見が折り合わない場合が圧倒的に多いですが、中には、相続人のうち行方がわからない方がいるため、相続人の方々で分割方法を話合うことができないケースやそもそも相続人が存在しないケースというものあります。

このようなケースでは、どのような対応が考えられるでしょうか。


2 行方がわからない相続人がいる場合の相続手続~不在者財産管理人制度~

(1)法定相続人の行方がわからないケースとは、もともと親とそりが合わなかった子どもが若いころに実家を出たまま寄りつかず、そのまま時間が過ぎてしまい、親が亡くなった際には、どこに住んでいるか、住民票で調査を試みても転居の届出がなされていない等で居所がわからない場合などに起こり得ます。また、子どもが外国に移住し、そのまま日本国籍を離脱したようなケースでも生じています。

遺産分割は、相続人全員の協議によって行われる必要がありますが、相続人のうち行方不明者がいて協議を行うことが難しい場合の遺産分割協議方法が問題となります。

(2)このようなケースに備え、法律では、不在者財産管理人という制度が用意されています。

不在者財産管理人は、従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない不在者に財産管理人がいない場合に、家庭裁判所が、他の相続人などの利害関係人の申立てにより、不在者自身や不在者の財産について利害関係を有する第三者の利益を保護するため、選任することができるようにしています。

このようにして選任された不在者財産管理人は、不在者の権利を確保するため、財産を管理、保存することはもちろんですが、家庭裁判所の権限外行為許可を得て、不在者に代わって遺産分割行為を行うことができます。

このようにして、遺産分割協議を不在者の財産管理人の選任を通じて実現することが考えられます。

なお、選任された不在者管理人は、その後も不在者が戻るか、不在者が死亡あるいは失踪宣告がなされるまでの間、不在者の財産を管理することとなります。

(3)不在者財産管理人の制度は、不在者が有している権利を保護しながら、周囲の関係者に生じる不利益を回避する制度として機能しています。

3 相続人がいない場合の手続~相続財産管理人制度~

(1)亡くなった方に相続人がいないケースもあります。単純に相続人がどなたもいないケースもありますし、相続人はいたものの、亡くなった方に借金等があって、又は、その可能性あるということで法定相続人の方々が順次相続を放棄し、結局相続人がいなくなったようなケースもあります。

 このようなケースでは、相続人はいませんので、遺産分割自体が問題になることはありませんが、亡くなっていた方が所有していた財産の管理をめぐって問題となることがあります。最近、問題となっているのは、亡くなった方がマンションの区分所有権を所有していた場合に、亡くなったことより、管理費や修繕積立金が未納となってしまうケースです。管理費や修繕積立金の未納は、マンションの管理組合にとってマンション全体の管理に影響する大きな問題です。   

(2)この場合の対応方法として、マンションの管理組合は、相続財産管理人の選任を家庭裁判所に求めることが考えられます。

相続財産管理人とは、文字通り、亡くなった方の財産を管理する者ですが、具体的には、相続人の相続財産(負債も含みます。)を調査して、管理の必要に応じて不動産等を売却等し、亡くなった方が債務を負っていた場合には、その債務の弁済などをして清算を行います。清算後に残った財産があれば国庫に帰属させます。この過程で、未払となっていた管理費用や修繕積立金を清算することが可能となります。

(3)65歳以上の高齢者人口が人口の21%以上に達した社会は、超高齢社会と呼ばれています。いち早く超高齢社会に突入した我が国は、総務省の試算によれば、2025年には高齢者人口は約30%にも達すると見られており、高齢者の増加や少子化により、相続人がいない相続が多数発生することで、マンション管理組合の理事の方々が頭を悩ます場面が増えるのではないかと考えられています。

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