弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

引取扶養と寄与分

2015年05月01日 相続

1 一夫の立場で考えてみましょう。

  松子は夫に先立たれ一人暮らしをしていた。彼女は昨年80歳になり物忘れがひどく耳も遠くなり足腰も相当弱っていた。ある日彼女はスーパーで買い物をしているとき何かに躓いて転んでしまった。勢いよく倒れたので頭を打って血を流した。近くにいた店員が慌てて救急車を呼んだ。彼女が病院で治療を受けていると既に自立している二人の息子のうち近所に住む長男の一夫が駆け付けた。幸い大事には至らなかったが、一夫は母を一人にしておくことが心配になり引き取って面倒を見ることにした。それから5年後彼女は癌で亡くなった。

2 法律はどのようになっているでしょうか。

  二人の息子の法律で定められた相続分はそれぞれ2分の1です(民法900条4号本文)。しかし、高齢の母を引き取って亡くなるまで面倒を見た長男と母の面倒を長男に任せきりにしていた次男の相続分が同じというのは不公平だと感じるかもしれません。そこで、相続人間の公平を図るために寄与分という制度があります(民法904条の2)。

 では、母の面倒を見た長男に寄与分が認められるかというと、当然に認められるわけではありません。寄与分が認められるためには単なる寄与ではなく「特別の」寄与が必要だからです(同条1項)。特別の寄与とは、扶養義務のある者がその義務の範囲を「著しく」超えて扶養した場合とされています(『新版家庭裁判所における遺産分割・遺留分の実務』330頁)。ですから、高齢の母を引き取って亡くなるまで面倒を見たとしてもそれだけで寄与分が認められるわけではないのです。

3 法律は正しいのでしょうか。

  「特別の」寄与という要件が規定された背景には、相続人間における公平の実現のみならず、被相続人との関係における清算の実現が考慮されたという事情があります(『家族法第2版』窪田充見著418頁以下)。同書では、寄与分を公平型寄与分と清算型寄与分に分類し、公平型寄与分については、実現すべきは相続人間の公平なのだから、一定の寄与が扶養義務の範囲に含まれるか否かという点は当然に重要なのではないとしています(427頁以下)。

4 自分には関係ないと思っていませんか。

  仲の悪い兄弟は言うに及ばず仲の良い兄弟であっても、いざ相続となると諍いが生じることも珍しくありません。しかも、諍いがこじれれば最終的には法律に従って解決するしかなくなります。法律の規定に納得できないとしてもあなたは法律に従わざるを得ません。だから、自分には関係ないと思い込まず、早めに弁護士に相談することが大切なのです。

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