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相続はタイミング次第?

2014年06月01日 相続

1 設例

Xさんには配偶者のAさん、子どものBさんとCさん、きょうだいのYさん、母親のZさんがいます。父親は遥か昔に亡くなっています。

  母親のZさんが亡くなり、Zさんには遺産として不動産がありました。Xさんも亡くなっていますが、Xさんの遺産について、Yさんとの間での分割協議は終わっていません。この状態において、亡くなったXさんの代わりにYさんとの間で分割協議を行うべきは誰になるでしょうか?

 

2 相続人になるのは?

上記設例を考えるにあたっては、まず相続人の大原則を知らなければいけません。

  相続人になる順序は、①子または子が相続できない場合にはその子、②①がいない場合にはその親、③②もいない場合にはその兄弟姉妹、と定められており、配偶者はそれらのどの順位の者が相続するかに関わりなく、常に相続人となります(民法887条、889条、890条)。

  上記設例の場合には、Xさんの相続人はその子がいるのでBさんとCさん、そして配偶者のAさんということになり、Zさんの相続人はその子のXさんとYさんということになります。

 

3 未分割のZさんの財産は誰が相続する?

では、まだ遺産分割が済んでいないZさんの財産についても、BさんCさん、そしてAさんも相続するということになるのでしょうか?

答えは「タイミング次第」です。上記設例では、あえてXさんとZさんとの死亡時期の先後関係を明らかにしていません。以下、説明します。

(1)相続の開始時期

   相続は、死亡によって開始すると定められています(民法882条)。ですから、Xさん、Zさんが亡くなった時点で、それぞれの相続は直ちに開始していることになります。

(2)Zさんが先に亡くなっている場合

 Zさんが先に亡くなっている場合、Zさん死亡時点では、子であるXさんとYさんは生存しています。したがって、Zさんの遺産である不動産は、その分割協議が済んでいなくとも、観念的にXさんとYさんの共有財産となります(民法898条)。続いて、Xさんが死亡した場合には、その時点でZさんの遺産の一部はXさんの財産となっているわけですから、結果としてBさんとCさんに加えて、Aさんも相続することになり、AさんBさんCさんはともにXさんの地位を引き継いで、Yさんとの間で遺産分割協議を継続することになるわけです。

(3)Xさんが先に亡くなっている場合

   他方、Xさんが先に亡くなっている場合はどうでしょう。Zさんが亡くなったとき、Xさんは既に死亡しているわけですから、ZさんにはYさんしか相続人がいないとも思われます。しかし、大原則にも述べたとおり、子がいないときにはさらにその子、すなわちZさんにとっては孫にあたるBさんとCさんが相続することになりますが、民法上はこれを「代襲相続」といいます(民法8872項)。この代襲相続をできる者に、配偶者は含まれていません。となると、Aさんは代襲相続人になることができないということになり、結果、BさんとCさんのみが、Zさんを相続し、AさんはZさんの遺産についての分割協議には参加できない、ということになるわけです。

(4)XさんとZさんの死亡が同時、もしくは先後関係が不明の場合

   同時死亡の場合には、死亡者相互の間には、相続が発生しません。そのため、上記設例においてXさんとZさんとが同時に死亡した場合、Zさんが死亡した時点でXさんも存在しない、という取扱いになります。結論としては、前記(3)と同じ結論になり、AさんはZさんの遺産分割協議に参加できないということになります。

   なお、AさんとZさんが不幸にも災害に巻き込まれるなどして、どちらが先に死亡したのかが明らかではない場合、同時に死亡したという推定が働くことになります(民法32条の2)。この場合も、同じ結論です。

以上のように、同じ家族関係でも、その死亡の先後関係によっては、結論に差が生じることとなり、相続はタイミング次第、ということもできるのではないでしょうか。

自身の相続人に余分な負担をかけず、迅速かつ適切な遺産分割を行うためにも、遺言の作成や早目の相談を心がけましょう。

 

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