弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

相続による事業承継に関する特則

2013年04月01日 相続

1.相続が発生し被相続人が事業を経営しておりその承継が問題となることは、弁護士にとっては、しょっちゅうお目に掛かる問題です。誰が承継するのか、事業承継と共にどのような遺産を承継するのか、その他の遺産はどのように相続するのか、共同相続人がいる場合にはそれらの相続分(あるいは遺留分)の侵害にならないのか、等々、すぐにいくつかの問題が脳裏を過ぎります。法律上会社組織にしていても、その所有持ち分を示す株式の相続という問題を介して同じ問題が発生します。

2.被相続人の生前からの相談では、遺言(公正証書が妥当)作成、遺留分侵害に備えた対策(遺留分放棄、あるいは、遺留分に対応した相続の指定等)、相続税対策がメインを占めますが、従前はやはり遺留分侵害に備えた対策や相続税対策に頭を悩めていたのが現実でした。

  すなわち、仮に遺言で特定の事業承継者である相続人に遺産の相続を集中させたとしても、それがために他の共同相続人の遺留分を侵害してしまい、結局、当初目論んでいた遺産の集中が阻害されたり、承継させる遺産(事業用資産あるいは株式)が高額であるほど相続税が高額になってしまう問題が生じていました。

  また、中小企業では、事業用の資産とそれ以外の財産との区別が必ずしも明確ではなく、相続が生じる度に中小企業の閉鎖あるいは企業の体力の減少という事象が生じることがまま見受けられました。国でも産業構造上中小企業が占める割合が大きいことや雇用確保の観点も踏まえ、事業承継が円滑に進展することが国益に叶うものであることを認め、平成20年5月に「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」(以下、経営承継円滑化法)という)が成立し、同年10月から施行されており、既に4年の歳月が経過しております。

3.経営承継円滑化法の概要

  この経営承継円滑化法は、(1)遺留分に関する民法の特例、(2)事業承継に関する金融支援、(3)取引相場のない株式等に掛かる相続税の納税猶予制度の創設、という3本柱を内容としています。

4.経営承継円滑化法による新制度のうち、遺留分に関する民法の特例は、①承継者が遺留分権利者全員との合意と②経産省大臣の確認及び③家裁の許可を得ることで、(a)生前贈与株式を遺留分減殺請求の対象から除外すること(除外合意)、(b)生前贈与株式の評価額を予め固定すること(固定合意)、を認めるものです。

実務的には、①の遺留分権利者全員から同意(=合意)を得ることが、従来の遺留分放棄と同様の問題を含むかも知れませんが、上述の(a)除外合意と(b)固定合意が二者択一の関係ではなく、併用も可能となっており、かなり柔軟な対応が可能なように制度設計されており、魅力的な一面も有しています。

また、事業承継する側の相談でなく、それ以外の相続人からの相談を受けた場合、遺留分侵害が生じているかどうか、については、経営承継円滑化法の適用を受けた生前贈与かどうかの確認が不可避となりますので、この点の注意も必要です。

5.経営承継円滑化法による相続税の猶予制度とは、概括的に言えば、取引相場のない株式(一般の中小企業の株式は概ねこれに該当するでしょう。)を相続により取得する場合、発行済み株式総数の議決権の23に達するまで(但し、相続開始以前から承継人が保有する株式の議決権数を含む)の部分にかかる課税価格の80%に対応する納税を猶予する制度です。いつまで猶予してもらえるかと言えば、承継人が死亡する日までであり、さらに、承継人が死亡する日まで該当株式を保有していた場合には、猶予された相続税相当額の納税義務が免除されます。

  概要を見る限り、親→子供→孫とこの経営承継円滑化法に基づき株式を相続する場合、制度が存続する限り、相続税の支払いを事実上しなくてもよいという可能性があります。

  ほかの要件も多々存しますが、この制度を上手く利用して節税することは、十分検討の余地があるでしょう。

6.税務の関係は、必ず専門化である税理士の方に相談されるべきですが、家庭法律相談センターでは、税理士の先生方との協力のもと、無料税務相談も実施しております。

  事業承継で悩まれている事業主の方は一度ご相談されてみてはいかがでしょうか。

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