弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

義母の介護と嫁の相続

2013年02月01日 相続

  「夫の兄弟は,義母の面倒を一切見ていません。長年,私が義母の介護を行ってきました。それでも,私は何も相続できないんですか?!」(相談者Aさん)

1 相続の場面におけるAさんの取扱い

遺産分割に関するご相談でよくお聞きするご相談内容になります。

法律上,相続人は,被相続人の配偶者(民法第890条),子(民法第887条),父母等の直系尊属(民法第889条1号),兄弟姉妹(民法第889条第2号)等が定められています。

残念ながら,Aさんは,義母の「子」ではないため,法定の相続人にはあたらず,基本的には,義母の財産について相続できる財産はありません。

しかし,このままでは,長年,献身的に義母の介護を行ってきたAさんの貢献が一切評価されないことになり,不合理な結論となってしまいます。

遺産分割の場面において,Aさんの貢献を評価してもらう方法,Aさんに相続権を認めてもらう方法として,次の方法が考えられます。

2(1)Aさんの貢献を評価してもらう方法

このような場合,妻の介護を夫の寄与分として主張することが考えられます。寄与分には,複数の類型が存在しますが,介護による寄与分の主張は,療養看護型の寄与の主張として一般的に説明されています。

ただし,寄与分が認められるには,通常期待される程度を越えた貢献が存在することが必要になります。また,療養看護の必要性,継続性等の要件を充たす必要があります。

ですから,寄与分の主張が認められるかは,個々の事案によりけりであり,介護を行っていれば,当然寄与分の主張が認められるというものではありません。

また,あくまで,夫の寄与分として主張するものですから,夫が死亡した後の介護についての寄与分の主張を行うことは困難となります。

仮に寄与分の主張が認められたとしても,療養看護型の場合,寄与分金額の算定方法は,介護報酬基準額等を参考として,具体的な金額が算出されることが多いようです。そのため,義母の相続財産が多額の場合には,夫の兄弟の相続財産額に比べ,Aさんの貢献について評価される金額が少額になることもあり,Aさんとしては納得がいかない場合も少なくありません。

(2)Aさんに相続権を認めてもらう方法

ア 養子縁組

Aさんが,義母と養子縁組を行う方法が考えられます。

養子縁組を行えば,Aさんは,義母の「子」となるため,法定相続人となり,相続権が認められ,他の兄弟と同額の相続分が認められます。

また,Aさん自身が相続人となりますから,義母に対する介護について,夫の寄与分ではなく,自己の寄与分として主張することも可能になると考えられます。

ただし,養子縁組の際に義母に痴呆等が存在するような場合には,義母の死後,養子縁組の有効性を争われる可能性があります。

イ 遺言書の作成

義母が,Aさんに,財産を相続させる遺言を作成する方法が考えられます。

ただし,遺言書を作成した際に義母に痴呆等が存在するような場合には,義母の死後,遺言の有効性を争われる可能性があります。

遺言の有効性が争われた場合に備えて,公正証書遺言を作成するようにしましょう。

3 最後に

  相続になった際に,義母の介護を行ってきたAさんの苦労が報われるためには,義母が亡くなる前から,遺産分割協議に備えて準備を行うことが必要です。

  Aさんと同じ立場にたたれる方は,夫,義母とどうするべきか,一度お話しをしてみてください。

また,義母の立場にたたれる方は,介護を行ってくれる嫁の相続財産が0となる可能性があることも考えて,息子や嫁とどうするべきか,お話をもちかけてみてください。

そして,家族で話し合ったことが,法的に問題がないか等,弁護士にご相談ください。

紛争になる前にご相談をいただき,紛争を可能な限り予防していただくことこそが,円満な相続処理につながります。

以上

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