弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

遺産を渡したくない場合どうする?

2013年01月01日 相続

1 はじめに

  御自身が亡くなられると、遺産は原則として相続人の共有となります。

  不動産であれ、実際に現物を分割したり、売却して代金を分割したりする 場合には、相続人全員のはんこが必要となります。また、預貯金(判例では法定相続分に応じて当然分割となります)も、解約しようとすると金融機関は相続人全員のはんこを要求してきます。

  ただ、例えばあの親不孝な子(以下、「親不孝な子」と言います。)には、遺産を渡したくないとか、ましてや死んだことすらも知らせて欲しくないということもあると思います。

  このような場合どうすれば良いかという問題については、大まかには2つの方法があり、それぞれ一長一短があります。

2 相続人の廃除を求める

相続廃除を生前にご自身で申立をする、自筆証書遺言又は公正証書遺言で廃除の意思表示をする(遺言執行者の選任が必要となります)方法があります。

メリットは、認められれば、親不孝な子から相続人の資格を奪うことができます。

デメリットは、相続廃除は相続人の資格を奪う制度ですから、要件も「虐待」や「重大な侮辱」とかなり厳しく、又、過去の審判例からは相当ひどいことをしないと(被相続人に対する犯罪で、継続的でないと認められないことが多いようです)認められませんので、確実に相続財産を渡さない保証はありません。そして、審判手続きで親不孝な子と向き合い、対決することになりますので、心身の負担は大変なものとなります(遺言による廃除の場合には、ご本人が亡くなられているので親不孝な子が仲良くしていたとウソの陳述をしてもそれがくつがえせるのか遺言執行者として証拠収集に苦しみます)。

3 公正証書遺言で親不孝な子に渡さない遺言を書く

  自筆証書遺言は、死亡後に検認という手続を経ないと、遺言に従った不動産の名義変更や預貯金の解約をすることができません。この検認の申立をすると、相続人全員に出頭して、なくなった被相続人の筆跡か否かを確認させる期日が開かれます。そうすると、当然ながら親不孝な子にも遺言があることや遺言に書いてある遺産があることを知られてしまいます。

  ところが、公正証書遺言の場合には、検認という手続きが省略されていますので、公正証書遺言に従って不動産の名義変更等ができ、死んだことも遺産があることも知られません。

  もちろん、親不孝な子には遺留分がありますので、被相続人が死亡したことや遺産があると知ると遺留分減殺請求を主張する可能性があります。ただ、遺留分減殺請求は、被相続人の死亡や減殺対象となる遺産があることを知った日から1年を経過する日か被相続人が死亡してから10年を経過する日のいずれか早い日で消滅しますので、疎遠になっている場合には遺留分減殺請求の主張を受ける可能性がかなり低く、デメリットとしてはそれほど大きくありません。

  メリットは、上記のとおり審判における心身に対する強いストレスなくなく嫌な親不孝な子に遺産を渡さなくてすみます。

  デメリットは、遺留分減殺請求を受けるリスクが長くとも死亡してから10年は残ることです。

4 最後に

  家族関係は、さまざまですので、あの子どもには渡したくないという相談をよく受けます。ただ、相続廃除という手段をとるのか、公正証書遺言という手段をとるのかは、それこそ家族関係、遺産関係、そして証拠関係を踏まえた判断となりますので、弁護士に相談することをお勧めします。

一覧へ戻る
一覧へ戻る