弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

親族間で感情的に対立している相続事件

2012年10月01日 相続

親族間で感情的に対立している相続事件

1 事案の概要

 知人から相続事件の依頼を受けました。事案の内容を聞くと、一戸建ての土地建物が亡夫の名義なので、きちんと自分(妻)の,名義にしたいとのことでした。相続財産の内容を聞くと、既に夫の死後長期間経過していて、わずかな現金は分割済みで相続財産は不動産しかなく、相続人は妻と子供2名で簡単な事案と思いました。

 ところが、依頼者(亡夫の妻)と面談すると、土地建物は普通の民家で、1階に依頼者が、2階には亡息子(父親が亡くなった後に死亡)の家族(妻と子供二人)が生活しており、同じ建物で居住しているとのことでした。しかも、両者は仲が悪く、家で顔を会わせても口も聞かないとのことでした。登記簿謄本を入手すると、土地と建物いずれも亡夫の名義でした。息子が同居する際に、2階の一部を増築しましたが、建物は亡夫の単独名義のままでした。

 親族ですので、話合による解決が望ましいのはもちろんです。しかし、普段から口も聞かないのでは話合による解決は困難と判断し、遺産分割の調停を家庭裁判所に申し立てました。相続財産が不動産だけなので、法定相続分による共有持分の登記も可能でしたが、それでは解決にならないと思い、調停を申し立てることにしたのです。

2 調停手続

 調停申立の際には、2つの解決策を検討しました。1つは全員で不動産を処分して売買代金を分けること。もう一つは、不動産の相手方の共有持分をどちらかが買い取ることです。

 ところが、調停では相手方も弁護士を代理人に選任し、寄与分の申立をしてきました。亡息子が、家の2階増築分の建築代金を全額出費したので、法定相続分の4分の1と寄与分を合計して不動産の共有持分9割を取得しているとの主張でした。正直、寄与分の主張は意外でした。亡息子に対しては、亡夫が生前に多額の金銭的な援助を行い、増築資金も亡夫が相当額を援助したと思われたからです。

3 調停での話合

 相手方は、申立人(依頼者)との感情的な対立もあって極めて強硬な姿勢でした。寄与分を主張して、一切譲歩しようとしませんでした。身内の感情的な対立ほど厄介なものはないと思いました。代理人として、相手方が強硬である以上、こちらも強硬な態度をとらざるをえません。依頼者は、日頃の鬱憤が蓄積しているので、代理人が譲歩の姿勢を見せたのでは信頼関係を維持できません。 

 しかも、依頼者は家に対する愛着が強く、不動産を処分する意思はありませんでした。また、年金生活者で蓄えもなく、相手方の共有持分を買い取る資力もないことが分かりました。

そのため、調停での話合は進展せず、審判に移行することになりました。

4 審判

 審判では、裁判官から話合を勧められました。仲が悪いといっても、義理の娘と孫だから当然です。感情的な対立の状況から、一つの家の1階と2階(1、2階とも各約43㎡)に住むことは困難と思いました。しかし、双方とも主張を譲歩すること及び建物を退去することを拒否しました。とても、代理人が説得できる状況ではなく、依頼者は感情的に対立している相手方と一緒に住むことを意に介さないようでした。そのため、話合は進展せず、審判になりました。審判は、土地については法定相続分どおり、建物につき亡息子の寄与分を3分の1認める内容でした。正直、寄与分が認められたのは意外でしたが、家の2階部分の増築により建物の価値が増加したこと、増築費用の大部分を亡息子が出費したと認められたことを考慮すると、やむを得ないと判断しました。

5 最後に

審判は確定しましたが、事件は解決したわけではありません。現在も、依頼者と相手方は一つの家に1階と2階に分かれて同居しています。代理人としては、他に良い解決策がないかを検討すべきと思いますが、残念ながら思い当たりませんでした。依頼者が、事件終了後に審判の結果に満足していたのがせめてもの救いです。

                          以上

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