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不動産の相続対策について

2012年08月01日 相続

1、不動産(土地・建物)は、小規模宅地の特例等を利用し、相続税評価額を下げ、納税金額を低くするのに一番利用しやすい資産です。

  例えば、特定居住用宅地等(被相続人の居住の用に供されていた宅地等)に該当し、原則として申告期限までに遺産分割協議が整えば、相続税申告すると、敷地240㎡まで相続税評価額の80%減にできます。1億円の土地が2000万円の評価額になりますので、節税できます。但し、平成22年税制改正で、特定居住用宅地等に該当するかどうかの要件が少し厳しくなりました。

2、不動産の相続方法には、以下の類型があります。

 ①共有による分割―共同相続人同士の共有とする方法ですが、その後の不動産の管理処分で問題がおきやすいやり方です。

 ②換価分割―不動産を売却して代金を共同相続人間で分ける方法ですが、売却益には譲渡所得税・住民税がかかります。

 ③代償分割―特定の相続人が単独相続する代わりに他の相続人に金銭を支払う方法です。

 ④現物分割―各相続人の個別の所有とする方法ですが、建物や小規模な宅地だと分けにくい難点があります。

3、不動産をどう分けるかで将来争わないようにする方法として、以下があります。

 、贈与の基礎控除と併せて2110万円まで贈与税が無税となる配偶者控除を利用して、夫または妻に自宅の全部または一部を生前贈与します。配偶者に生前贈与することは、子の理解を得やすいです。

(適用要件)は、①婚姻期間が20年以上あり、②贈与の受けた配偶者が住む不動産もしくはそれを購入する資金の贈与であって、③贈与を受けた翌年3月15日までに該不動産に居住し、その後も引き続き居住見込みであり、④以前に同一配偶者から特例を受けておらず、かつ贈与税の申告をすることが必要です。

    ②,相続時精算課税制度(2500万円までの贈与を相続時に精算する前提で贈与税を非課税にする制度)を利用し、不動産を生前贈与します

この制度を利用すれば、贈与の年の1月1日に65歳以上であった親から20歳以上の子(代襲相続人の孫も含む)に2500万円までの財産を贈与しても翌年の3月15日までに申告すれば贈与税がかかりません。

例えば、65歳以上の親が、その所有する土地に無借金で6000万円かけて賃貸用アパートを建てたとします。相続時精算課税制度を利用して20歳以上の子に該アパートを贈与しますと、この場合の贈与税の評価額は以下の計算により2520万円になります。

 6000万円×0,6(固定資産税評価額)×(1-借家権割合30%)

2520万円

この場合の贈与税は、以下の計算により4万円にすぎません。

2520万円-2500万円)×20%=4万円

     そして親との間で定期借地権を設定すれば、土地の相続税評価を20%減

     できます。

㊟抵当債務が残っているアパート・マンションの贈与ですと、負担付贈与となり、時価で評価した金額での贈与にされて贈与税が算出されますので、注意が必要です。

 ③遺言作成は、相続対策になります。

小規模宅地の特例による評価減や配偶者の税額控除(遺産額の2分の1または1億6000万円)などは、遺産分割協議ができていないと適用できません。しかし遺言で遺産全部の分割内容を具体的に定めれば(相続人の誰に何の遺産(不動産)をどのくらい相続させるか等が確定できる内容であれば)遺産分割協議がなくても、前記特例や税額控除が受けられ、相続税が節税できます。

  公正証書遺言なら遺言無効になる可能性は、ほとんどありませんが、公正証書だから安心というわけではありません。将来相続人間で係争にならないためには、遺留分に配慮した詳細な配分内容を定めた遺言が不可欠です。相続問題に詳しい弁護士など専門家に事前相談されることが大切です。

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