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行方不明の相続人がいる場合の遺産分割協議

2010年09月01日 相続

1 相続が開始しますと,残された相続人は,相続財産の有無を確認するとともに,誰が相続人であるかという点を確認する必要があります。

  しかしながら,例えば,Aが死亡し相続が開始したため,共同相続人間で遺産分割協議を行おうとしたところ,Aの共同相続人のうちBが数年前に蒸発しており,行方不明となっていることが判明した場合,その後の遺産分割手続については,どのように進めればよいのでしょうか。

このような場合,行方不明であるB以外の共同相続人だけで遺産分割協議を行えばよいのではないかと考える方もいらっしゃるかも知れません。しかし,遺産分割協議は共同相続人全員が参加して行わなければならず,行方不明の共同相続人Bを除外し,Aの残りの共同相続人だけで遺産分割協議を行うことはできません。 

 そこで,このような場合には,以下の2つの方法により解決を図ることができます。

2 まず,第1の方法としては,不在者財産管理人制度を利用することが考えられます。

  不在者財産管理人制度とは,不在者(行方不明であればよく,生死が明らかであるか否かは問いません。)が自己の財産を自ら管理できるようになるまでの間,不在者財産管理人により一時的に不在者の財産を管理するための制度です。

この制度を利用すれば,不在者財産管理人がBのために遺産分割協議に参加することができるため,適法な形で遺産分割協議を行うことができるのです。

この制度を利用するためには,Aの共同相続人などの利害関係人が,家庭裁判所に対して,不在者財産管理人選任の申立をする必要があります。そして,家庭裁判所によって,Bの不在者財産管理人が選任された後,この不在者財産管理人と残りのAの共同相続人との間で,遺産分割協議を行えばよいのです。

  なお,不在者財産管理人が遺産分割協議を成立させるためには,家庭裁判所の許可が必要となります。これは,不在者財産管理人によって不在者の利益が不当に害されることを防ぐために要求されるものであり,家庭裁判所は,不在者財産管理人によってなされた遺産分割協議の内容が不在者の利益を損ねるものか否かという観点から許可の適否を判断します。したがって,この場合の遺産分割協議においては,一般的に,Bが法定相続分相当額を取得する分割内容にする必要があると考えられ,Bが財産を全く取得しない内容としたり,Bが取得する財産を法定相続分以下にする内容の遺産分割では,家庭裁判所の許可を得ることは難しいと考えられます。

  このような遺産分割協議の結果,Bが財産を取得した場合,不在者財産管理人は,Bが現れるか,Bの死亡が明らかとなるまでの間,当該財産を管理しなければなりません。もっとも,行方不明であったBが,その後突然現れたり,Bの死亡が明らかになることは,そう多くないと考えられます。そのため,不在者財産管理人による管理を終了するためには,後述の失踪宣告制度を利用することになります。

Bについて失踪宣告がなされれば,これによりBは死亡したものとみなされ,不在者財産管理人の管理業務は終了となります。そして,不在者財産管理人が管理してきたBの財産については,その後,Bの共同相続人間で遺産分割協議を行うことになります。

3 次に,第2の方法としては,失踪宣告制度を利用することが考えられます。

  失踪宣告制度とは,不在者の生死不明の状態が一定期間継続した場合に不在者を死亡したものとして扱う制度です。ここでいう「期間」は,失踪の態様によって異なります。具体的には,一般的な不在者(この場合を「普通失踪」といいます。)に関しては7年間の期間の継続が必要であり,戦争や船舶の沈没などの危難に遭遇し生死不明となった不在者(この場合を「特別失踪」といいます。)については危難の去った後1年間の期間の継続が必要です。

  そのため,Bが生死不明になってから上述の期間が継続している場合には,失踪宣告制度を利用することができます。

  この制度を利用するにあたっては,Aの共同相続人などの利害関係人が,家庭裁判所に対して,失踪宣告の申立を行う必要があります。そして,その後,一定期間(普通失踪の場合は6ヶ月以上,特別失踪の場合は2ヶ月以上)の公示催告の後,家庭裁判所により失踪宣告がなされることになります。

  失踪宣告がなされますと,普通失踪の場合には失踪期間の満了時に,特別失踪の場合には危難の去った時に,Bが死亡したものとみなされます。そして,これにより,Bについて相続が開始し,Bの相続人が,Bの地位を承継します。

したがって,Aの相続財産に関する遺産分割協議については,Aの共同相続人と,Bの地位を承継したBの共同相続人との間で行えばよいことになるのです。

4 いずれの方法についても,一般の方には馴染みのない手続かと思われますので,このような場合には,一度,弁護士会家庭法律相談センターをご利用ください。

以上

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