弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

「簡単な遺産分割調停」

2009年11月02日 相続

 家庭裁判所の調停委員を、8年間勤め、その中で記憶に残っている事件について、思いつくままに書き綴る。

 最初のボタンの掛け違いから、調停に持ち込まれた事案。

初回調停日に、申立人と相手方双方から調停に至る経緯を聴く、申立書は事前に目を通しておくが、本人より口頭で再度、直接話しを聴くのが通例。

 申立人は、自宅で母親を看護していたところ、その母親が亡くなり、疎遠で所在が分からなかった妹と母親の遺産を分割するという案件。

 当日の話からも、相手方の妹は、姉が母親を長年世話し、苦労をかけていたことを理解し、法定相続を基本として姉が看護したことから、応分の財産を相続することを了解していた。
特に此と云った争いを認める事は出来ない事案。

 家庭裁判所の調停となった事情はただ一つ、姉が妹と長年疎遠であったので、妹の気持ちが分からなかったこと。

 姉は、直接、遺産分割の話しを持ち出したのでは、不当な要求をされるのではないかと思い込んだ。
そこで、知り合いの司法書士に交渉を依頼、司法書士には本来取り扱えない事柄であるが、母親の亡くなった事実と遺産協議書を妹に送付。
妹は全く知らない人から母親の死亡を知らされ、遺産分割協議書まで送られて来たことに困惑。
その司法書士へ、遺産分割書を突然送ってきたことに抗議したところ、姉に妹が遺産分割案に反対していると伝わった。

5 姉は、妹が遺産分割について不当な要求をするものと誤解して、司法書士の薦めに応じて、調停を申し立てた。

 妹には、不当な要求をする意思はなく、調停員の立場から姉の誤解を説いて、従来の遺産分割書の内容通りに調停が成立。
妹さんは、姉が直接連絡してくれれば、こんな事にはならなかったのにと言い残して解決。  

 どうして、このような何の変哲もない話しが記憶に残っているかといえば、私も同じ様な体験をしたからである。

 10年以上も前になるが、父親を亡くし相続の件で兄弟と話しあったとき、父親と同居していた長兄に、遺産を明らかにして相続人全員で分割について話し合った方がいいと提案したところ、余りいい顔をしなかった。

 此方としては、長兄へ父親の面倒を長年看て貰い、感謝し、自分は一銭も貰う積もりは無かった。
ただ父親が作った財産を知りたかっただけであった。

 長兄は、私が弁護士であることから法定相続分を主張すると誤解、警戒したのである。
兄弟仲は良いと思っていたことから、これを知り、とても哀しい思いをした。

 自分の考えを、直接、長兄に告げ、誤解を解き、遺産分割協議は円満に解決。
この時に、直接、長兄に気持ちを伝えることがなければ、もしかしたら、家庭裁判所の調停のご厄介になっていたかもしれない。

こんな経験があったから、この件も些細なことが原因で、話しが拗れたなと感じ、姉が妹へ直接、真意を伝えられれば、双方、嫌な思いをせずに済んだのではいか、との思いから記憶に残る案件である。

                                                                                   以上

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