弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

祭祀承継と形見分けの話

2009年04月01日 相続

 人が亡くなるとお墓に埋葬されます。
そして、亡くなった人の配偶者や子孫等がお墓を守り、祭具(仏壇等)を預かり、法事などの供養をしていくことになります。

 お墓や祭具を受け継ぎ供養をしていく者を、「祭祀承継者」と言いますが、戦前の民法では、家督を相続する戸主が祭祀承継者となることが定められていました。
ところが、戦後の新民法では、家督相続は廃止され、系譜、祭具及びお墓の所有権は、慣習(その社会での伝統的な決まり)に従って祖先の祭祀を主宰するものが承継することになり、祭祀承継は相続から切り離されることになりました。
また、被相続人(亡くなった人)が祭祀を承継する者を指定した場合には、指定された人が承継することになります。
被相続人による祭祀承継者の指定は、遺言で行うこともできます。

 現在のように、少子化が進み、また、結婚しない人も増えてくると、亡くなった人の姓を継ぐ人や、お墓を守る人がいなくなるケースが増えています。
  よくあるケースに

、子供がいないご夫婦のご主人が先に亡くなり、奥さんがお墓を守ってきましたが、自分が亡くなった場合に、お墓を誰に守って貰うか悩む場合があります。
この例では、ご主人と自分の兄弟・姉妹も既に亡くなっており、両方の甥、姪はいることとします。

 奥さんとしては、自分もご主人と一緒にご主人の家のお墓に入り、ご主人の方の甥ごさんにお墓を守ってもらいたいと考えています。
しかし、奥さんが亡くなった場合には、ご主人側の甥ごさんには、相続権は無く、自分の甥や姪が相続することになってしまいます。

 こういう場合には、ご主人の方の甥ごさんに一定の財産を相続させる、また、祭祀承継者としてはその甥ごさんを指定するという遺言を行ったうえで、甥ごさんに、自分の死後は、ご主人と一緒の墓に入れて貰い、お墓を守ってくれるように頼んでおくと良いでしょう。

 また、遺言は公正証書により行っておくことが、後のトラブルを避ける意味でも有効です
遺言に関しては、弁護士会家庭法律相談センターでも相談を承っておりますので、お気軽にご相談下さい。

 次に、形見分けのお話しをします。

 ある人が亡くなると、親族が集まって形見分けをすることがあります。
形見分けというのは、亡くなった人の身の回りの物などを、縁があった人達で分けることであり、形見分けを受ける人は必ずしも相続人だけとは限りません

 一般的に、形見分けの対象となるのはあまり財産的価値の無い物であり、財産的価値が大きいものについては、遺産分割の対象となると考えられます。

 しかし、財産的価値は低くても、遺産分割をする場合に、形見分けのトラブルが原因で、相続人間に感情的な対立が生じ、遺産分割が円滑に行われないことがよくあります。

 亡くなった人と同居していた相続人は、亡くなった人の身の回りの物は当然自分が相続するものと考えている場合も多く、亡くなった後に、財産的価値が無いと思って処分してしまうこともあります。

 ところが、他の相続人にとっては、亡くなった人との関係で処分された物がとても思い入れの深い品である場合もあるのです。

 例えば、その物は自分が最初に貰った給料でプレゼントしたものであるとか、生前に自分が貰うことを約束していた等という場合です。

 このように、形見分けは物の客観的価値よりもその人にとっての主観的価値の部分が大きいのです。

 従って、亡くなった人の身の回りの物を保管している人は、形見分けが遺産分割を円滑に行う助けになることもあることを考え、安易な処分は避け、他の相続人に声をかけて形見分けを行うと良いでしょう。

 また、生前に、自分の死後、この品は誰に貰って貰いたいというメモを作成し、相続人に託しておくことも、相続人間の感情的対立を避ける意味で有効です。

 相続をめぐるトラブルは相続人間に重大なしこりを残す場合が多いので、賢い相続を目指したいものです。
                                              以上

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