弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

相続人がいない場合の財産の行方

2008年10月01日 相続

 

先日、A子さんが相談にやってきました。

A子さんが15歳で上京してから結婚するまでの間、住みこみで家事を手伝い、結婚後も実の親子のような付き合いを続けてきたB子さんが亡くなってしまったというのです。
B子さんには身寄りがないため、お葬式はA子さん夫婦が出したけれども、B子さんの残した家や貯金などの財産をどうしたらいいのかという内容の相談でした。

どなたかが亡くなった場合、その方が残した財産は相続人(配偶者や子供であることが多いでしょう。)が相続することになります。

では、身寄りのない方が亡くなって、相続人となるべき人が見当たらないという場合にはどうしたらいいのでしょうか。

このような場合、先ほどのA子さんは、B子さんの葬式費用を負担しているわけですから、家庭裁判所に対して相続財産管理人の選任を請求し、B子さんの相続財産の中から葬式費用についての弁済を受けることができます。

相続財産管理人は、弁護士がなることが多く、亡くなった方の残した財産の状況について把握し、管理します。
そして、亡くなった方に相続人がいるのかどうかを調査し、相続人がいることが判明した場合には、その任務を終えることになります。

では、亡くなった方に相続人がいない場合、相続財産はどうなってしまうのでしょうか。

亡くなった方が遺言書を残しており、その遺言書に財産を誰に譲るという内容が記載されていた場合には、財産は遺言書に記載された人のものになります(法律上は「遺贈」といいます。)。

亡くなった方が遺言書を残していなかった場合には、亡くなった方の残した財産を相続すべき人も、遺贈を受けるべき人もいないわけなので、財産は国庫に帰属するすなわち国のものになることになります(民法959条)。

 しかし、民法958条の3には、いわゆる「特別縁故者」に亡くなった方の財産を与えることができるという規定があり、亡くなった方の相続人でなくても、家庭裁判所の判断で、亡くなった方と「生計を同じくしていた者」、亡くなった方の「療養看護に努めた者」などに亡くなった方の財産の全部又は一部を与えることができることになっています。

A子さんの場合も、B子さんと生活を共にしていた時期がありましたし、B子さんの亡くなる直前2年間は身の回りの世話をかいがいしく行っていたという事情があったので、家庭裁判所に特別縁故者に対する財産分与の申立を行いました。

この申立は、亡くなった方との特別縁故関係を主張する人が、家庭裁判所に対して行う必要があります。

そして、申立をした人が「特別縁故者」にあたるかどうかは、家庭裁判所が個々の事案の具体的状況をみて判断します。
今までの例では、内縁関係にある配偶者や認知されていないものの生計を同一にしていた子どもなどについて、「特別縁故者」であるとの認定がなされています。
内縁の配偶者について特別縁故関係が認められた例は多くみられますが、それ以外のケースではなかなか「特別縁故者」として認定されるのは難しいのが現状です。

B子さんは、A子さんのことを身近な人に娘として紹介し、A子さんを養女に迎え入れたいと考えていたようです。

それであれば、B子さんが生前にA子さんと養子縁組を行っていれば、今回のような相続財産管理人選任請求や特別縁故者に対する財産分与申立といった手続をとる必要はなかったのです。
せめて、遺言書を残してくれていれば、、、。

身寄りのない方に、生前から亡くなった後の財産等の心配をさせるのは酷なようでもありますが、亡くなった後に無用な混乱やトラブルが起きないようにするためにも、周りの人と一緒に、方策を考えておく必要があるのではないのでしょうか。

                                         以上

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