弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

離婚時の財産分与請求について

2017年11月01日 離婚

質問

会社勤めをしている夫と結婚して、15年になります。私は結婚後、家事やパートに頑張ってきました。子は、授かりませんでした。夫から、先日、離婚を切り出されました。女性の影はありません。元々性格が合わない面があるのです。だから、私も夫が望むなら、離婚に応じてもいいと考えています。ただ、先々の生活に不安もあります。

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ですから、住み慣れた家は私がもらいたいと思っています。家は結婚後に夫名義で取得しました。ローンは夫婦で完済しています。どのように交渉を進めればよいですか。というのも、夫は調子のよいことを言ってくるのです。「先に気持ちよく離婚届に判を押してよ。離婚してくれたら、こちらも気持ちよく財産分与の協議に入る。」と言います。それでいいでしょうか。

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年金についてもお尋ねします。夫は結婚当時勤めていた会社に、現在も勤め続けています。夫は、国民年金のほかに厚生年金に加入しています。一方、私は、国民年金に加入しています。ただ、厚生年金や共済年金については、加入していませんし、これまでに加入したこともありません。「年金分割」という制度があると耳にしたことがあるのですが、私に適用される見通しはありますか。

なお、夫は結婚前に定期預金を有しており、さらに結婚中に相続で亡父の財産を取得しています。それらについて、私は財産分与請求できますか。

回答

離婚に伴い、婚姻期間中に夫婦が共同で形成した財産を分けることを財産分与といいます。協議が整わなければ、調停もしくは審判、または裁判によります。

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ア 本件では、ご主人が離婚を希望しているのですね。ならば持ち家をあなたに分与してもらうなど、納得のゆく財産分与の取り決めを先行させましょう。なぜなら、離婚する前であればこそ、あなたが財産分与に関してもイニシアティブを握れるからです。離婚に応じてもらえるというインセンティブが夫にあるうちに、財産分与協議をあなたのご希望どおりに進める。そのほうが得策です。財産分与を納得いく内容に整えて、それから初めて、離婚に移りましょう。財産分与においては、夫婦それぞれ1/2ずつが原則。ですので、財産価値の大きい住宅を取得したいとなれば、相当額の清算金を支払う必要性が生じるかもしれませんが。また、財産分与により不動産を譲渡すると、譲渡所得税が発生する可能性があることから、協議する際には、税理士などに確認した方が無難です。

 何事も書面にすることが重要です。協議が整ったら、離婚協議書を作成しましょう。できるのであれば、強制執行認諾文言付き公正証書(公証役場で作成する離婚協議書というイメージです。)という形にすることが望ましいです。公正証書は通常の契約書より証明力がありますので、のちのち裁判になったときにも有利になります。

仮にあなたが夫の言葉に従って、先に離婚届を提出してしまうと、次のような不都合があります。ご主人が持ち家の分与に応じない場合、あなたは家庭裁判所に財産分与調停を申し立てざるをえないことになります。離婚時から2年以内に申し立てる必要があるうえ、調停をしても、持ち家があなたに分与される保証はありません。

ですから、離婚する前に財産分与協議を整えておくことが、本件ではことさら肝心なのです。

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お尋ねのケースでは、あなたは年金分割を受けられます。

説明の便宜から国民年金と厚生年金を、二階建ての建物になぞらえてみます。国民年金は一階部分に、厚生年金は二階に当たります。二階については、財産分与の対象になります。本件では,婚姻期間中にご主人が払い込んだ二階部分、つまり厚生年金の年金記録を、2分の1まであなたは分割取得できます。

もちろん、双方の合意によって自由に年金分割をすることもできます。通常、「離婚協議書」には、年金分割条項を記載します。

離婚後には、必ず年金事務所に行って、実際に年金分割を実現してください。受給できる時期になったときには、分割を受けた年金を、受給できます。

先程ご説明したとおり,婚姻期間中に夫婦が共同で形成した財産を分けることを財産分与といいます。もともと夫が有していた財産(定期預金)や婚姻期間中に夫が相続した財産は、「夫婦が共同で形成した財産」ではありませんので、分与の対象となりません。

以上

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