弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

子どもと離婚、婚姻費用及び養育費について

2016年04月01日 離婚

1 日本国憲法は、その第24条第1項で、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」と定めております。それでは、離婚はどうでしょうか。この規定の対象外と考えられます。なぜなら、我が国においては、裁判離婚のように、両性の合意に基づかない離婚も存在するからであります。

2 しかしながら、我が国においては、両性(夫婦)の合意によって簡単に離婚できる協議離婚という制度があります。これは、子どもがいる場合には、大変問題となります。離婚は子どもの人生に大きな影響を与えるからです。そこで、協議離婚は、未成年の子どもがいる場合には、認めるべきではないという意見もあります。さらに進んで、未成年の子どもがいる場合には、調停離婚や裁判離婚も、原則的には認めるべきでないという考えもあります。もちろん、例えば、夫が妻や子に対してDVを行う場合や、夫が妻子を遺棄するような場合は、別でありますが。

3 次に、民法第760条は、「夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。」と定めております。そして、離婚しない限り、婚姻が破綻して別居中である夫婦であっても、婚姻費用分担請求権(義務)は消滅しないと解されております(昭和30年6月7日大阪高裁決定)。そこで、本条の分担の意味でありますが、原則は夫と妻の実収入が同額となるようにすると解釈すべきではないでしょうか。具体的には、夫の収入から公租公課を差し引いた額と妻の収入から公租公課を差し引いた額が同額になるように計算し、その上で、さらに、子どもを養育する方に一定の養育費を上乗せするのです。そして、計算後の過不足を、お金の移動によって調整するのです。

4 婚姻費用の分担については、いわゆる簡易算定表というものがあります。これは、東京・大阪養育費等研究会(東京や大阪の裁判官等で構成)が平成15年に公表したもので、正式には、「簡易迅速な養育費等の算定を目指して-養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案-」と言います。実務では、広く利用されております。

5 しかしながら、この算定表は、概して言えば、収入の多い夫に非常に有利で、収入が少ない、しかも、子どもを養育する妻に非常に不利なものになっております。やはり、上記3の考え方に沿った婚姻費用の分担にすべきでしょう。しかも、夫が妻子を置いて一方的に家出(別居)した場合にも破綻原因者の夫に非常に有利になりますので、夫が一方的に家出をすれば、夫の負担が減るという、このような現象を放置しておくと、我が国における婚姻制度は崩壊することになりましょう。

6 この算定表は、離婚後における、養育費(民法第766条第1項)の算定にも広く利用されております。しかしながら、この算定表については、処々方々から沢山の批判が出ております。この算定表が貧困母子家庭を作り出してきた元凶であるという極論を述べる人たちがいるほどです。

7 特に、問題なのは、東京等の大都市の場合です。この算定表は全国一律で作られておりますが、例えば、東京の場合には、全国平均よりも、物価が高く、教育面では、私学志向が強く、進学関係費用がかさみ、また、いわゆるお稽古ごとに熱心であること等から、生活費がかなり高いものとなっております。これらの大都市の特殊事情が算定表では考慮されておりません。そこで、子どもを引き取った妻の生活がとても厳しいものになることが往々にしてあります(かといって、夫が親権者になるべき理由がないのが殆どです。)。

8 このような状況の中で、犠牲になるのは特に子どもです。妻の生活が大変なことにより子どもの生育が十分に行えないのは許し難いことです。算定表を大きく改善すべきですし、とりあえず、運用によって実質的な改善を図るべきでしょう。

9 ところで、養育費が何らかの形で決められているのに、夫が支払わないことがしばしばあります。この場合には、一旦、国や地方自治体が妻に立て替え払いをして、後にその額を国や地方自治体が夫から強制徴収する等の方法を検討すべきです。現行では、妻が判決等の債務名義を得て夫に対し強制執行をしなければなりませんが、その手間は大変ですし、お金もかかります。また、強制執行が成功するとは限りません。これでは、妻は生活が困窮し、子どもに対して満足な養育ができないことになります。主要先進国では、どこも行政が養育費に関与しているようです。我が国においても、行政の立て替え等の施策を早急に実現すべきです。

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