弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

年金分割の盲点

2015年03月01日 離婚

 離婚の際の「年金分割」の制度は、一般の方においてもだいぶ浸透してきたように思います。調停や審判では分割割合について「5割ではなく3割にするべきだ」といった主張もなされますが、概ね最後は5割で決着がつくものです。そのため年金分割については、裁判所も代理人弁護士も、財産分与や慰謝料、養育費といった請求に比べて、注意を払う度合いが低いようにも感じます。そこで、自分自身が代理人として大失敗しそうになった経験を踏まえてちょっとした注意を書こうと思います。

 年金分割の請求期間は、原則として離婚した日の翌日から起算して2年以内です。2年以内に裁判所に年金分割の申立をすればいいのではなく、2年以内に分割割合を決めて年金事務所に申請をする必要があります。仮に、離婚から2年が経過する前に家庭裁判所に調停や審判の申立を行って、調停・審判をやっている間に2年が過ぎてしまった場合や請求期限経過日前の1か月以内に按分割合を決める和解や審判が成立した場合、成立した日の翌日から起算して1か月以内に年金事務所に分割請求の申請をしなければなりません。

 この「2年」や「1か月」という期間は案外すごく短いのです。最近は、双方の当事者が離婚することには合意できているけれど財産分与の条件で合意ができないケースも多々あります。私が担当したケースでは、離婚裁判中に離婚をして、財産分与についてその後継続して争いました(年金分割について離婚時に分割割合を決めて調書を作成しておけば良かったのですがうっかりそれをしないままにしてしまいました)。財産分与の和解が成立した時点で、離婚してから2年経過する日が目の前でした。事情があって裁判所が和解調書を作成したのが和解成立日から3週間後。本人はすぐに年金事務所に年金分割請求の申請をしましたが、既に和解成立日から1か月以上が経過し且つ離婚日から2年以上が経過していました。

 年金事務所は、当初「離婚から2年以上経過しており受け付けられない」と申請を拒絶したため、「裁判所で調書を作成するのがかなり遅くなった」ことを説明してなんとか受け付けてもらいました。しかし、その後日本年金機構理事長名義で「今回の請求は離婚の日から2年を経過しており、厚生年金法第78条の2及び厚生年金保険法施行規則第78条の3規定により請求はできない」との決定が・・・。その後、関東信越厚生局社会保険審査官宛てに上記処分を不服として審査請求をしましたが、やはり「離婚成立から2年を経過しており、且つ和解成立日から1か月が経過している以上、原処分は妥当であり取り消すことはできない。」との通知が来ました。頭を抱えましたが気を取り直して社会保険審査会に再審請求をおこない、期限内に申請ができなかった事情や裁判実務では和解成立後すぐに和解調書を受領できないこともあり得ること、和解成立後1か月以内という申請期間はあまりに短く権利を不当に侵害しておりそんなに短期間しか申請を認めない合理的理由は存在しないこと等ありとあらゆる考えられる事情や意見を主張したところ、年金事務所から「厚生労働省より見解の変更がありました」との連絡を受け、『請求期限については原則2年以内であり、和解等に時間を要した場合等においては「2年経過日前1か月以内に請求すべき按分割合を定めた和解が成立したときは、当該和解が成立したときより1か月以内」となっています。本件については2年経過直前に和解調書が作成されていることから、実際に和解調書が作成された日をもって「和解が成立したとき」と認定し、そこから1か月以内に請求されていることから却下処分を取り消します。』との決定をもらいました。今後、同様の事例があった場合には同じように扱う、ということになったとのことです。

 このケースでは年金分割を認めてもらえたものの、「和解調書作成日から1か月」ということ自体、まだ申請期間としては短すぎると思います。実際に年金分割されるのはだいぶ先の将来であることも多いのに、離婚後2年を過ぎたら審判や和解成立からなぜ「1か月以内」の申請じゃないといけないのでしょう。裁判所できちんと権利を確定してもらったのに、その申請が「1か月以内」に限られるとは不合理極まりなく感じます。単にお役所の事務手続が煩雑になるのを避けたいから、としか考えられません。

 しかしなにはともあれ、離婚をする際にはその時点で年金分割の割合を決めておくことを忘れずに、そして割合が決まったら依頼者にすぐに年金事務所に申請するように伝えることも忘れずにおきましょう。                        以上

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