弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

モラハラと離婚

2013年09月01日 離婚

1 モラハラとは

「モラハラ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「セクハラ」,「パワハラ」と響きは似ていますが,知名度では大きく劣っていると思います。

「モラハラ」とは,「モラルハラスメント」の略であり,直訳すれば精神的嫌がらせということになりますが,実態は一言で説明できるほど単純なものではありません。

妻側から離婚の相談を受けていると,本人が自覚している場合だけでなく,本人の自覚のないまま夫によるモラハラ被害に遭っているケースがあります。いずれも夫からの精神的嫌がらせが毎日延々と繰り返され,誰にも相談できないまま妻が精神的に追い込まれてしまっていました(なお,モラハラ自体は,夫婦間に限られるものではありません。また,妻によるモラハラもあり得ます。)。

2 モラハラの具体例

  次に,私が担当した複数の案件から,モラハラ行為の例をご紹介します(なお,プライバシー保護のため,多少アレンジしています。)。

 (1)特に理由もなく,妻の顔を見て深いため息をつく。首を横に振る。

 (2)赤ちゃんに向かって,「ママみたいになっちゃダメだよ。」と語りかけ,間接的に妻を攻撃する。

 (3)「人の服を勝手にクリーニングに出すな。」と言うので,スーツのクリーニングは夫に任せていた。夫は,1年以上にわたり,スーツを自分でクリーニングに出し,自分で回収していた。ある朝,夫が,スーツがないと騒ぎ出し,「クリーニングを取りに行くのはお前の仕事だろ!人の厚意に甘えるな!」と妻を罵倒する。

以上は,ほんの一部ですが,1つ1つはたいしたことではないと感じるかもしれません。しかし,万事が万事この調子で,毎日続けられると,妻は常に夫の顔色を窺うようになり,いつの間にか精神的に追い込まれていくのです。

3 モラハラをする夫の特徴

  モラハラを行う夫には一定の共通項があるように思います。それは,一言で言うと「頭が良い」,「頭の回転が速い」ということです。

  まず,証拠が残るようなことはしません。肉体的暴力に及ぶことはなく,専ら言葉と態度によって妻に精神的苦痛を与えます。証拠が残るメールでの攻撃もありません。

  次に,「いい夫」と思われるための振る舞いを知っています。私がお会いした夫は,どなたも大変爽やかで,ハキハキと受け答えをし,好印象を与える方ばかりです。そして,妻を非難することはなく,「仕事に掛かりっきりで,妻との行き違いが生じた。」といった類の説明をします。さらに,「私たちのことでご迷惑をお掛けして申し訳ありません。」と,こちらに対しての気遣いを言うことも忘れません。後でも述べますが,これに騙されてしまう調停委員がいることは否定できません。

  最後に,理不尽なことをもっともらしく言うことが得意です。しかも,それを次から次へ延々と続けることができるのです。そのため,冷静に考えれば甚だ理不尽であるにもかかわらず,妻はそれに気付くことができず,「自分が悪いんだ」,「自分がちゃんとすれば,夫は優しくしてくれる」との自己暗示にかかり,さらに状況を悪くしていきます。

4 モラハラと離婚調停

 モラハラを理由とする離婚調停では,夫の言動が常識の範囲を超えており,自分がいかに精神的に追い込まれているのかを,第1回期日から調停委員に理解してもらうことがポイントですが,これは簡単なことではありません。

モラハラ案件の場合,1つ1つのエピソードはそれ程大きくないため,どうしてもインパクトが弱くなりがちです。したがって,暴力を伴うDVと異なり,すぐに「それはひどい」と共感してもらえるとは限りません。また,上記3で述べたとおり,モラハラを行う夫は,証拠を残しません。さらに,調停委員に好印象を与える術を知っています。

 そのため,気がついたときには,「ご主人も仕事でストレスが溜まっていたのでしょう。あなたももう少し気持ちにゆとりを持って接すれば・・・。」などと,調停委員から妻が説得されるような展開になってしまうこともあります。

 このようにならないためにも,夫の言動を日記などに残しておく,早い段階から家族や友人に相談するといった準備とともに,いざ調停を申し立てる際には弁護士にご相談されることをお勧めします。

                                     以上

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