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離婚に伴う財産分与3~財産分与に伴う問題

2013年06月01日 離婚

1 離婚に伴う財産分与の原則

財産分与とは、離婚をした夫婦の一方が、相手方に対して財産の分与を請求することができる権利です(民法768条1項、771条)。財産分与の対象となるのは、夫婦が結婚時点から別居時までに協力して取得した財産であり(具体的事情によっては離婚時までと判断されることもあります。)、夫婦共有名義のものだけでなく、夫婦が協力して取得した財産と評価されるものなら一方名義のものも含まれます。

財産分与には、①婚姻中に夫婦の協力により取得した財産の清算(清算的財産分与)、②離婚後に経済的自立困難な配偶者に対して生活に困らないようにする扶養、③離婚による精神的苦痛に対する慰謝料という意味がありますが、①清算的財産分与が中核的な要素になります。

清算的財産分与の対象財産になるか否か問題となるものとして、様々なものがありますが、今回は退職金及びストックオプションについてお話します。

2 退職金について

退職金は、勤務してきた者が退職する際、勤務先の退職金支給規定にしたがって支払われるものであり、賃金の後払的性格を有するものです。婚姻期間中の勤務については、夫婦の協力があったからなし得たものであり、退職金を得た場合、婚姻期間中の勤務に対応する部分については夫婦の協力があったから取得できた賃金と評価できます。

既に支給された退職金は、勤続期間のうち婚姻期間が占める割合が財産分与の対象となります。

それに対し、将来退職したときに支給される退職金については、企業等の経営状況、本人の退職理由等のさまざまな要素によって左右されるため、当然に財産分与の対象とはなりませんが、「将来退職金を受け取れる蓋然性が高い場合」には対象とされています東京地裁判決平成11年9月3日等)。「将来退職金を受け取れる蓋然性が高い場合」にいう「将来」が何年先を言うのか、「蓋然性が高い場合」がどのような場合を指すのか不明確ですが、公務員や大企業の従業員等で定年まで年数が少ない場合が「将来退職金を受け取れる蓋然性が高い場合」に当たるとして、将来支給される退職金も財産分与の対象と認められ易い傾向があるようです。裁判上は、定年まで約6年の会社員東京地判平成11年9月3日)、定年まで約6年の信用金庫職員(東京家審平成22年6月23日)、定年まで約8年の国家公務員(名古屋高判平成12年12月20日)の退職金について財産分与の対象と認められています。

また、支払時期については、離婚時の即時分与(東京地裁判決平成11年9月3日、東京地判平成13年4月10日)とするものと退職金の支給時(大阪高裁判平成19年1月23日、東京家審平成22年6月23日)とするものに分かれています。離婚時の即時分与は、退職金の支給時を支払時期とするものに比べて早期に受取れる安心感があるものの算定額が低くなる傾向にあり、いずれの方法をとるかは事案の内容に応じた判断が必要となります。

3 ストックオプションについて

ストックオプションとは、会社が取締役及び従業員に対し、予め定められた権利行使価額で会社の株式を取得することのできる権利を付与し(付与)、取締役や従業員は、将来、株価が上昇した時点で権利行使を行い、会社の株式を取得し(権利行使)、売却することにより(譲渡)、株価上昇分の利益が得られるという報酬制度です。

婚姻期間中に権利の付与、行使及び譲渡が行われたものについては、財産分与の対象財産とすることに異論はないと思います。

しかし、婚姻前に付与された権利を婚姻中に行使したとき、婚姻中に付与された権利を離婚時に未行使であるとき等は、財産分与の対象となるか、対象になるとしてどのように評価するか等の問題が生じます。

ストックオプションについては、税制上は一般的に権利行使時(税制適格の場合は非課税)及び譲渡時に課税されますが、離婚に伴う財産分与における取扱について決められたルールがありません。財産分与制度の趣旨を前提とした上で、当該ストックオプションの権利行使価格及び権利行使の可能性等の個々の事案の特殊性も加えた総合判断が必要となります。

4 最後に

退職金及びストックオプションの他にも、財産分与の対象財産になるか否か、微妙な財産があります。離婚を望む当事者は、離婚したい一心から、専門家のアドバイスを受けずに慌てて手続を進め、その結果、後悔する事態に陥ることがあります。

離婚を考えられる際には、家庭問題に精通した弁護士に相談することが重要です。家庭法律相談センターを利用されては如何でしょうか。

以上

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