弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

弁護士法23条の2による照会~財産分与の場面において~

2012年11月01日 離婚

 離婚時、夫婦の一方は他方に対し、婚姻中に形成された共有財産を分与するように求めることができます。対象財産が夫婦の一方の名義になっているとしても、婚姻期間中の夫婦の協力によって形成されたものと認められるのであれば、分与の対象となります。そして、この分与の割合については、最近では、裁判所は原則として2分の1とする運用をしています。 

 このように、2分の1の割合で財産分与を求めることができるとしても、相手方がどこにどのような財産を保有しているかがわからないと、「そんな財産はない」などと言われてしまう可能性もあります。そこで、財産分与を求める側において、できる限りの資料を収集しておかねばなりません。

 通常考えられる夫婦間の共有財産としては、不動産、自動車、預貯金、株等が挙げられると思います。

このうち、不動産については、所在地さえわかれば、各地の法務局で「登記簿謄本」を取得できますので(郵送でも取得できますし、コンピューター化された登記所であれば管轄外の不動産でも登記簿謄本を取得できます。また、インターネットで閲覧することも可能です。)、その登記簿謄本を取得すれば、相手方配偶者名義の不動産かどうかは簡単に知ることができます。しかし、「何年か前に●●市に不動産を購入したと言っていたけど、具体的な所在地は聞いていない」などという場 合には、残念ながら登記簿謄本を取ることは難しくなります。

自動車については、各地の陸運局で「自動車登録事項証明書」を取得すれば所有者が誰であるかを把握できます。しかしこれも、個人情報の取扱いが厳格化された昨今の流れから、登録番号(ナンバー)のほかに車台番号を明示しないと証明書の交付を受けられなくなりましたので、「自動車の登録番号(ナンバー)しかわからない」という場合には、証明書の取得ができないこととなります。

さらに預貯金や株といった金融資産については、具体的な取引支店名や口座番号等を示したとしても、名義人以外の者への開示に対しては大変厳しく、名義人の妻である(夫である)というだけでは、残高や取引履歴の開示請求に応じてもらえることはまずありません。

このように、相手方が不動産や預貯金を持っているようだけど、どこにどういった内容のものがあるのかはっきりしない、というような場合には、「弁護士法23条の2に基づく照会」を検討してみる余地があります。

「弁護士法23条の2に基づく照会」とは、真実に合致した公正な裁判を実現するため、弁護士が所属する弁護士会を通じて必要な資料を保持する機関に対しその資料の内容等について照会を求めることができる、という法律上の制度です。

上記の例でいうならば、不動産については、●●市に対し、不動産の固定資産税台帳、名寄帳に登録されている相手方配偶者名義の不動産があるかどうかを照会します。自動車については管轄の陸運局に登録番号(ナンバー)を特定したうえで、所有者等の情報の開示を求めます。また、預貯金や株については取引先銀行の支店や証券会社に対して、夫(妻)名義の口座の有無や取引履歴等を照会することとなります。

もっとも、照会先機関がこの照会に応じてくれるのかどうかですが、法律上は照会を拒絶する正当事由がない限り照会に応じなければならないと考えられているものの、照会先機関は、「名義人の同意がない限りは回答できません」といった理由を掲げて回答を拒否することも多いというのが現実ではあります(本来は、相手方の同意がないというだけでは、回答を拒否する正当理由があるとはいえません)。特に上記例の場合では、市町村の固定資産税台帳や名寄帳に関する回答や、預貯金の情報については、残念ながら回答がなされるほうがむしろ稀なのが実情です。

しかしそれでも、具体的ケースによっては照会に応じてくれる場合もありますから、弁護士法23条の2の照会をすることは十分検討に値する手段だと思います。財産がどこにあるか分からないということでお悩みの方は、一度弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。

但し、照会をするとしてもどこの機関に対して行うかを決めなければなりませんから、「不動産はあるようだけどどこの市町村にあるのかがまったくわからない」ような場合や、「どこの銀行かが全くわからない」ような場合には、弁護士法23条の2の照会をすることも難しくなります(なお、銀行等の金融機関は、支店単位での照会になりますので、支店まで特定する必要があります)。従って、特に離婚を考えている段階においては、相手方配偶者の資産がどこにあるのか、例えば、どこの銀行のどこの支店を利用しているかとか、不動産固定資産税の課税時期にどこの市町村から納税通知書が送付されてくるかなどについて、日頃から意識しておく必要もあるのではないかと思います。

以上 

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