弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

面接交渉権の悪用事例

2011年09月01日 離婚

  1 表向きは子供との面接交渉を要求しているが、真の目的は別の所にある、そういう父親が時々います。

  例えば、本当は母親との復縁を求めたい父親が、復縁を前面に出して迫ればストーカーとして摘発されかねません。そこで、父親は、面接交渉権の行使を大義名分として、半ば強引に母親と接触する機会を得て、「子供のことは両親で取り組まなければならないから、今後も子供のことで話し合おう。」等と、もっともらしいが白々しい言葉を並べ、頻繁に母親に連絡を取ろうとします。

  また、子供との面接交渉が円滑に進まないことを承知で敢えて面接交渉の実施を強要し、案の定円滑に進まなかった場合に、母親が子供に父親の悪口を吹き込んでいるからうまくいかないんだ等と言いがかりを付け、昼夜を問わず母親宅に押しかけて騒いだり、濫用的な調停申立や履行勧告申立等を連発して母親を徒に裁判所に引きずり出したりして、母親を困惑させる、そういう父親もいます。この種の行動に及ぶ父親は、実は、母親やその実家から金品を巻き上げようと企てているものです。正面から金品を要求すると恐喝になるので、面接交渉を隠れ蓑にするのです。金品要求の根拠も「面接交渉権妨害の慰謝料」等と言い張る訳です。

2 このような面接交渉の悪用事例は、悪用に晒されている母親から見れば、瞬時に「これは悪用だ」と確信します。

  例えば、復縁要求型の悪用事例の場合、面接交渉を実施する場で、父親は、子供そっちのけで母親との会話を求め、しかも、会話の内容が、子供のことではなく、母親の交際相手の有無に関してだったりします。母親からしてみれば、薄気味悪いとしか言いようがありません。

あるいは、父親の親族、特に父親の母親が、母親に対し、海外ブランド物の装飾品を半ば強引に贈与したりします。もちろん、その親族は、父親の意を受けています。直接父親が贈与したら面接交渉を隠れ蓑にしている意味がなくなるので、親族に代行させるのです。そして、父親の母親からすれば、子供は孫に外ならないので、母親に対し「孫を大切に育ててくれてありがとう」等と白々しい感謝の意を表明して、装飾品贈与の口実にするのですが、贈与の裏に何があるか、母親にとっては見え見えです。

また、金品要求型の悪用事例の場合、母親が、婚姻時に、父親の金グセの悪さに苦しめられていたことが多々あります。父親は、単なる多重債務どころではなく、平気で母親の所持品を無断で質入れしたりもします。離婚後も、その延長で、母親からむしり取ろうと企てるのです。もちろん、父親は養育費など払っていません。父親は金品目的なので、母親を困惑させること没頭し、夜中に母親宅に押しかけて騒いで、それを聞きつけた子供が恐怖におののいても全く意に介しません。

3 ところが、母親にとっては一目瞭然の「悪用目的」も、何故か、裁判所や警察等の紛争解決機関には、なかなか理解してもらえない傾向にあります。だからこそ、悪用する父親側にとっては利用価値があるのでしょうが、母親にとってはたまったものではありません。

  例えば、父親が申し立てた面接交渉の調停の場で、母親が「養育費が何か月も滞っている」旨を口にするや否や、調停委員に「面接交渉の問題と養育費の問題は別、養育費を払わないから会わせないという考え方はいけない。」等と、論点をすり替えられてしまうことがあります。

  また、父親が夜中に母親宅に押しかけて騒ぐのでやむなく警察を呼ぶと、警察官が「あんた(母親)が会わせないからいけないんだ」「子供がどんなに嫌がろうが会わせなければ駄目だ」等と言い出すこともあります。

  もちろん、以上のような調停委員や警察官はごく少数であり、大半の調停委員や警察官は真剣に取り組んでくれます。しかし、それでも、父親が「悪用目的」を有していることの証拠が乏しいので、やむを得ないことではありますが、なかなか悪用事例であることを踏まえてはご対応いただけないのが実情です。

  もちろん、悪用事例に取り組む弁護士にも、如何に明確かつ説得的に父親の「悪用目的」の存在を主張立証するか、技術を磨き、熱意をもって臨むことが強く求められるでしょう。

4 ところで、以上申し上げたことが、複数の事例を組み合わせて執筆したのではなく、すべて同一の母親・父親間で実際に発生したことだとしたら、読者の皆さんは、どのように思いますか?

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