弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

離婚裁判と子供の親権の争い

2010年07月01日 離婚

1 親権の争い

 離婚の際に、子供の親権につき争いになることが多い。子供の親権に関しての争いは通常は熾烈であり、当事者間での話合いによる解決は困難であるため、訴訟になるケースが多い。子供と別居している親が、親権を求めて子供を連れ去る事例も珍しくはない。

 親権をめぐる争いは、通常子供の親権者となることを希望する場合であるが、親権者となることを双方が拒否して争いになることもある。極めて稀な事例と思われるので紹介をしたい。

2 事案の概要

 事件は、夫からDVを受けている妻の離婚事件で、夫からは日常的に暴力や性的な虐待を受けていた。暴力に耐えかねて、何回か家を出て警察に保護を求めたこともあった。妻は、夫の執拗な暴力等から精神的な病気にもなり、裁判当時は市役所の保護下で病院の精神科に入院中であった。夫が妻の行方を執拗に探していたことから、妻の居所を知らせていなかった。夫婦の間には子供が二人おり、一人の小学生の子供は夫が引き取り一緒に生活していたが、もう一人の子供は2歳と幼いこともあり、施設で生活をしていた。事件受任の際に妻と面談したところ、精神的に相当に病んでおり、夫との婚姻生活にこれ以上耐えられる状況ではなかった。離婚につき、慰謝料等の金銭は一切請求しないので、できるだけ早く離婚したいとの希望だった。市役所の担当者とも面談をしたが、早期に離婚をしたうえで病院を退院し、生活の自立を図る計画との説明だった。

3 手続きの経過

 事件受任後、家庭裁判所に離婚調停の申立をしたが、夫は離婚の意思がまったくなく、家庭裁判所の調停期日に出頭しようとしなかった。しかも、家庭裁判所からの呼出通知を受け取って激怒したのか、書記官に暴言を吐いたようであった。そのため、調停は2回で不調となった。

 妻が、離婚を強く希望したことから離婚訴訟を提起することになった。妻は、夫と離婚して早期に自立することを希望していた。事案の内容から判断して夫のDVは明らかと思われたが、弁護士を依頼せずに夫本人が裁判所に出頭して、妻が被害妄想で精神的な治療の必要があると述べたことから、事実関係に関する主張が双方でまったく異なることとなり、訴訟は難航した。裁判官は、双方の事実関係の主張がまったく異なるために、どちらの話を信用してよいか分からないようであった。

4 親権の争い

 裁判が進み、子供の親権が問題となった。妻は、訴訟の当初は幼い子供の親権を希望したが、訴訟がある程度進んだ段階で、幼い子供に関しても親権を希望しないと述べるようになった。これから自立して働いて生活していくのに、幼い子供を育てる自身がないと言う理由であった。代理人は、幼い子供の将来を考え、親権を希望するように説得をしたが、妻の意思は固かった。

 夫は、最初から離婚に猛烈に反対していたが、妻が幼い子供の親権を希望しないことを知ると、責任逃れと激しく反発して親権者を妻とすることを求めた。

 裁判所は、妻が子供の養育の負担を逃れようとしているとして、妻に対する心証を悪くした。

 代理人としては、正直対応に苦慮したが、妻が現在精神科に入院中であることや、病院を出ても仕事がなく、当分は生活保護を受給せざるを得ないことを説明して、裁判所の理解を求めた。 

5 判決の内容

 裁判所は、最終的には妻の事情を理解して、離婚を認めたうえで子供2名の親権者を夫と定めた。判決では、妻の主張が全面的に通った。勝訴の理由としては、妻の証言と言うよりは、市役所の担当者から聴取した事情が大きかったと思われる。夫は、控訴をしなかったので第一審で判決は確定した。

 しかし、幼くして施設に入所している子供の将来を考えると、代理人としては後味の悪い裁判となった。

6 最後に

 離婚裁判で、当事者が精神的に病んでいる事例は少なくない。両当事者とも精神的に病んでいる場合があり、一方が婚姻の継続や親権に固執すると裁判は紛糾する。本件でも、裁判所での夫の態度から判断して、夫の精神状態も普通とは思われなかった。このような離婚裁判では、通常の事例と異なる対応が必要と思われるが、離婚裁判は多種多様であるために現実的には個別に解決するしかないと思われる。

  以上

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