弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

ある離婚事件の話

2009年06月01日 離婚

1.突然夫(又は妻)から離婚調停を起こされた事件。

通常、離婚事件と言えば、緊急性の高く早急の弁護士相談・対応が必要なDV(配偶者間暴力)事件、夫婦の一方が不貞行為(浮気)をすることによる離婚事件、仲違いから長期間別居し全く夫婦の実態が無くなった事件等がすぐ思い浮かぶところですが、今回は全く離婚なんて考えたことが無かったのに、突然離婚調停を起こされたという方々の事件について、一つは離婚に至った事件、一つは離婚に至らなかった事件についてお話ししたいと思います。

2.1つめの事件は次のような事件です。

単身赴任の夫の帰りを待って、家計を全て管理していた妻がいました。
昨年末まで夫の態度に何ら変わりもありませんでした。
ときたま単身赴任先の海外から夫が帰国した際の夫婦生活にも何も変化がありませんでした。
夫は妻に夫の給与等の財産の殆どの管理を任せ、妻は我が家で夫の留守を守っていました。

ある日、夫から、単身赴任を終え日本の本社に復帰するため帰国する旨の連絡があり、妻は大変喜びました。
そして帰国する日の近づいたある日のこと。妻にとって信じられないようなことが起こったのです。
それは、弁護士を通じて単身赴任の夫からの離婚調停申立てでした。

妻は大変驚き、自分一人で離婚調停に出席しましたが、どうしても自分で冷静に対応することなどできませんし、法律知識も不安でした。
インターネットとかで得た知識があっても、しっかり対応できるか分かりません。
そうして妻である依頼者は、弁護士会の法律相談に来所され、弁護士を依頼したのです。
相談に来た時、妻である相談者(依頼者)は大変困惑しており、不安で夜も寝られない状況でした。
ともかく弁護士の助力が必要ということで、受任しました。

離婚調停の席で、夫が言っている理由は、ただ「別れたい」「帰国後一緒に住みたくない」の一点ばりでした。
妻に納得がいくわけがありませんので、妻である依頼者は、当初「離婚したくない
」との話でした。

しかし、夫の代理人弁護士や夫の態度について調停委員の先生から聞いたり、調停が進行する間に、次第に気持ちが冷えたのか、別れる気持ちになったようです。
夫の方は、多額の住宅ローンを夫が親から借りて完済し住宅を妻に財産分与するだけでなく、妻が管理している夫の財産その他にも妻に多額の追加的な給付・財産分与すること等の種々の給付を受けることを申し出てきました。

結果、妻は離婚することを決意し、結局離婚調停が成立しました。(子供はいませんでした)。

この事例では、夫に他に女性ができたのではないかとの疑いもありましたが、夫は否定しました(妻は調停調書に不貞行為をしていないことが前提という記載をすることを要求しましたが、夫は結局これを拒否し、それを見た調停の場で妻が泣き出したため、妻側の要求により記録中に「不貞行為をしていないと夫が言っていた」旨の記載を残してもらうということで終わりました。)。
この事件では、少なくとも調停委員の先生を通じて知らされた夫の考えの中に十分と言えるような離婚理由はありませんでした。

   妻自身はこの調停を通じて新しい人生の出発をすることを決心したようであり、結果的には(全くふっきれたというわけではないでしょうが)妻の納得は得られたようでした。   

   離婚調停と言えば、通常何かそれなりの具体的な離婚理由(裁判上の離婚事由とはなかなかなりませんが単なる性格の不一致等)が挙げられているのが通常なのですが、この事件は、最後まで、妻が、なぜ離婚を求められたのか、その理由を知らされることなく離婚に至ったものです。
もちろん妻側には、夫の理由が明確であったのかどうかは不明ですし、調停委員の先生方が、夫から伝えられた全ての理由を、妻の心情に配慮して妻側に話していないことも十分考えられます。

本件では、裁判離婚事由は無いが妻である依頼者が離婚することを決意したためで妻本人の気持ちが大きく変わったのが調停成立にとって大きかったのですが、当初は突然予想もしなかったのに離婚調停を起こされたため妻である依頼者はかなり憔悴する程ショックを受け夜も眠れない状況でした。
離婚調停で弁護士が付き、最終的に離婚の条件が妻の側が十分納得のいく条件であったことで離婚が成立したということはできますが、予め離婚の可能性を予想して相談できていれば、もっとショックはやわらげることができたかもしれません。
何より、何の心配もなく話を聞いてもらえますし、第三者である弁護士の立場から見た現状についてのコメントを求めることができます。

3 2つめの事件は、妻がある日手紙をおいて(少なくとも夫にとっては)突然家を出て行った事件です。
ただ、自宅のすぐ近所に引越して住んでいた事例であったため、間もなく子供が自宅と妻の部屋を行き来していたので、住んでいるところはすぐわかった事件がありました。

   妻に出て行かれて真っ青になった夫が、当時の私のボス弁のところに相談に来たという事件でした。
相談者である夫は、当初誰に相談したものか悩んだそうで、仕事も手につかなかったそうで、一通り状況を話し終えるとやっと冷静になったようでした。

   調停は、当初、絶対に別れるという妻側と、絶対に、別れたくないという夫の考えにとても大きな隔たりがありました。
事実としても妻側から夫が威圧的である云々という話があり、夫はそんなことはしていないと真っ向から否定していました。

そんな中、絶対に別れたがらない夫及び弁護士に対し、離婚調停を申したててきた妻の意向を聞いた後の調停委員の先生から、興味深い話がありました。

それは、(一部の方々には当たり前のようなのですが)、夫と妻の見方は、たいてい一致しないものだ、という話で、夫と妻は男女としての違い故か、性格は本来一致しない、のが一緒に夫婦でうまくやっているんだという話でした。
具体的には以下のような話です。

つまり、同事件の担当の調停委員の先生(男性)が世間で「おしどり夫婦」「似たもの夫婦」と呼ばれているそうなのですが(ご本人談)、裁判所の研修か何かで、夫と妻それぞれ、色々な事項について思っていることを書き、それを後で相互に見せ合うという実験・体験をしたというものでした。
実験の結果は、予想通りかもしれませんし、驚かれるかもしれませんが、結果は、見方、意見の殆どが全く違う、見ているもの、考えているものが全く同じでない、相互に「あんたこんなこと考えていたのか?」という位認識が違っていたので驚いたとのことでした。

 調停委員の先生は、このような話を通じて、あなたが気がつかないことで奥さんの気持ちを傷つけていることも、たとえあなたに悪気が無くても、ありうるのですよ、とのお話をされたのでした。 

 勿論、この調停委員の先生の例が一般的かは私にはわかりませんが、他方、何となく納得してしまうところもありました。

  結局、この事件では、両親の家を行き来する子供達が「かすがい」となったこともあり、また両親共に子供を大事に思っていることは確かでしたので、すぐ離婚するのではなく、双方自己の見方を考え直す等して、しばらく様子を見ようということになりました(その後私は事務所を変わったため、以後のことは知りませんが、その後離婚したという話は無いようです。)。

この事件では、離婚調停を通じて夫婦の話し合いが進められたのか、いつの間にか、離婚の話自体が勢いを失ったという事例で、事例としては、別に珍しい事例ではないのかもしれませんが、相談者の夫が、誰に相談して良いかわからず、仕事も手につかなかったと言っていたことからすれば、以前何かの機会に離婚問題について聞いたり調停申し立てを知ってすぐ弁護士の離婚相談に行き話をすればすぐかなり落ち着いたのであろうと思われます。

それは聞き手としての弁護士が、弁護士として依頼者の話を良く聴き、依頼者の立場に立ち助言をし共に考えるという役割の外、話の食い違いには見方の違いの部分も存在する(どちらから嘘を言っている場合もむろんあると思われます)ので、少し第三者的にひいた冷静な視点も持って、時に第三者的な視点から依頼者の方に何が有益でありうるかという点を意識し、依頼者の方の判断に有益な情報等を助言し、また依頼者と共に悩み考える役割を果たすという側面があるため、すぐには無理でも、間もなく、少しづつでも、依頼者が多少広い視野でものを考えられ落ち着くことができるからだと考えることも可能かも しれません。

3 最後に離婚の増加と離婚相談の時期

  最近特に、法律相談で、離婚の相談の数・割合が増えたと感じることがあります。
他の弁護士に聞いても、同じような印象が聞かれることがあります。

離婚自体の統計で良く引かれる厚生労働省人口動態統計の年間統計(平成20年度)では、一応、「我が国における離婚件数・離婚率(人口千対)は、年々増加し、平成14年に最高の離婚件数である289836組、離婚率2.31に達し、その後も多少減少したものの平成20年推計で251000組、離婚率2.0となる等、以後横ばいを続けている」とのことで、見方によっては一時小休止という見方もありうるようです。

しかし、法律相談の現場の印象としては、まだまだ増えているという印象であるように思われます(印象そのものが限られた事例に基づくものであるという見方もありますが)。
(弁護士の離婚相談の段階の数字は、「既に離婚した」後の上記数字と異なるので、弁護士の離婚相談の数字が増えているという話と離婚自体の数字の変化に多少差違があっても必ずしも矛盾はしないということなのでしょうか。)。

  このような状況の中、時に、先のような形で、離婚なんて全く考えたことも無いのに、突然相手方(夫又は妻)から、離婚調停を申し立てられることもあるわけです。  

  そこで、離婚相談って自分とは関係が無い、自分とは別の問題だと思われる方にとっても、人生で離婚のことを考えた時、また、離婚の話が出た時、弁護士に離婚相談をすることついて、早い時期にどのようなメリットがあるのかを考えるのは、意味があるように思われます。
特に、上記各事例で、突然のことに驚いてしばらく眠ることもできない状況になっていた当事者の方々のことを思い出すと、自分に起こりうるかも知れない事態について予め家庭法律(離婚)相談を利用しておくのも大切なことかもしれないと思います(実際、最近の離婚相談では、色々ネットとかで情報を得たが、具体的に自分の場合はどうかという疑問を持たれる等して、かなり早い時期に色々なことを知りたいと言うことで法律相談に来られる方が増えているようです)。

                             ( 以 上 )

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