弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

婚約の不当破棄

2009年03月02日 離婚

 夫婦が離婚しようという場合には、離婚が認められるかどうか、また、慰謝料等が発生するかどうかが問題になることはよく知られています。
婚約をしたものの、結婚前に婚約を解消する場合にも、似たような問題があります。

 離婚するには大変なエネルギーが必要になりますが、婚約破棄の場合にも、感情的な対立から、大きなトラブルになることがあります。
結婚することを周囲に発表していたり、結婚式の招待状を既に送ってしまっている場合はなおさらです。
筆者は、弁護士会家庭法律相談センターで相談を受けた案件で、依頼者の男性と一緒に、女性の家庭を訪問して、婚約解消を伝えて謝罪したことがあります。
その時は、婚約破棄に正当な理由があったわけではなかったので当然ではありますが、相手方当事者及びその親御さんからの大変厳しい言葉の数々を依頼者共々、2時間程度浴びせられ続けることになったわけです。

また、子供を妊娠している場合等は、その子の養育費や、場合によっては中絶するかどうか等の難しい問題も伴います。

 それでは、婚約を破棄された方としては、相手方に何を請求できるでしょうか?
まず考えられるのは、「約束どおり、結婚して欲しい」という要求でしょう。
しかし、結婚というのは、当事者が自由な意思によって行うものですから、婚約したとはいえ、結婚を法律によって強制することはできません。
したがって、要求することは勿論可能ですが、なおも拒否された場合に、裁判によって強制的に結婚させることはできません。

ですので、婚約を破棄された側としては、法律によって結婚を強制させることはできず、後は損害賠償請求によって、精神的損害(慰謝料)や、結婚準備のための経済的損害等を請求することができるにとどまります。

 しかし、婚約を破棄された場合に、常に相手方に対し損害賠償請求をできるわけではありません。
婚約を破棄する正当な事由がなかった場合、言い換えると、婚約を不当に破棄された場合でなければなりません。
不貞行為や暴力等の有責行為があった場合には、正当な事由がなかったと認められやすいでしょうが、家族の反対というだけでは正当な事由とは認められにくいでしょう。

(1) そもそも婚約が成立していたかどうか曖昧なケースもあります。
そもそも婚約とは、将来結婚しようという当事者の合意のことを言います。

婚約の成立には、真意に基づく確実な合意があれば、口頭の合意で十分です。結納や婚約指輪の授受等の形式が必要なわけではありません。

(2) しかし、結納や結婚指輪の授受等の形式は必要ないとはいっても、単に口頭だけで婚約したといっても、後日争いになったときに、どうやって立証できるかという問題があります。
また、恋愛中のカップルは、多かれ少なかれ、将来の結婚を意識した言動をしていることがあります。
単なる恋人同士の睦言というレベルでは、真意に基づく確実な合意であるとは認められないケースも多いと思いますが、婚約が成立しているかどうか判断に迷うケースも少なくなりません。

婚約の成否が争いになるケースでは、真意に基づく確実な合意であったかどうかをめぐって、結納の有無、婚約指輪授受の有無、結婚の具体的な時期が決まっていたか、式場の予約をしたか、同棲していたか、相互の家族に引き合わせたか等、色々な事情を主張立証することになります。
この意味では、先ほど、婚約は口頭の合意で十分である、と書きましたが、形式を踏んでいる方が、婚約の成立を認められやすいということになります。

 万が一、婚約解消についてトラブルになった場合には、弁護士会家庭法律相談センター等で、弁護士に相談してみるのも良いと思います(個人的には、一緒に謝りに行って下さい、という依頼ではない方が有り難いですが)。

その際、婚約が成立していたか、破棄したことに正当な事由があるか等については、個々のケースで微妙な判断が必要となることもあります。
弁護士に具体的な事情をご説明頂くことになります。
勿論、特にそのような準備をしておかなくても、担当弁護士の方で順番に尋ねていきますので大丈夫ですが、主な出来事等を予め紙に書いて、時系列の流れをまとめて頂けると、限られた相談時間を有効に使うことができます。

                                                 以上

一覧へ戻る
一覧へ戻る