弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

外国の裁判所で出された養育費支払判決

2009年01月05日 離婚

 花子さんと太郎さんは日本で結婚して子どもが一人いましたが、太郎さんの仕事の都合でアメリカへ家族で引っ越しました。
 ところが、アメリカに住んでいる間に、太郎さんの女性問題が原因で離婚することになり、まだ小学生だった子どもは花子さんが親権者となって養育することとし、太郎さんは花子さんに毎月1,000ドルの養育費を支払うこととなりました。
 アメリカでは日本にあるような協議離婚という制度はなく、離婚手続は全て裁判所で決定されることになります。
花子さん達の場合も、住んでいた州の裁判所で手続をとり、離婚、親権者、養育費といった事柄について裁判所の決定がされました。

 花子さんはアメリカの裁判所の判決に基づいて日本の大使館に離婚の届け出を行い、戸籍に記載されました。
花子さんは離婚後もアメリカで仕事に就き、子どもと二人で生活しています。

 ところが、太郎さんは花子さんと離婚が成立するや、交際していた女性と結婚して日本に戻り、日本の会社に転職しました。
太郎さんと新しい妻との間にも子どもが生まれましたが、花子さんの方へは決められた養育費を全く支払っていません。

 花子さんは、共通の友人を通じて太郎さんに養育費を払うように伝えてもらいましたが、一向に支払が無いため、日本に一時帰国した際に弁護士に相談しました。
 そこで、取立の依頼を受けた弁護士から太郎さんに請求書を送りましたが、無視されてしまいました。
そのため、やむを得ず日本の裁判所に、外国判決に基づく執行判決を請求する訴訟を提起し、これまで太郎さんが不払いしていた金額の合計と、将来発生する毎月の養育費とを、強制的に取り立てることの許可を求めました。

 外国の裁判所で出された判決は、日本でそのまま効力を持つわけではありませんが、民事訴訟法の118条に規定された条件を充たした場合には、それに基づいて強制執行をすることもできます。その条件とは、

 ①法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められていること

 ②敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く)を受けたこと又はこれを受けなかっ たが応訴したこと

 ③判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に 反しないこと

 ④相互の保証があること

と定められています。最後の④「相互の保証」とは、日本の裁判所の判決もその外国で効力が認められることを意味し、アメリカの裁判所については「相互の保証」はあるとされているようです。

 花子さんから依頼を受けた弁護士が、太郎さんの住む場所の裁判所に提訴したところ、太郎さんは裁判所が指定した期日に出頭し、養育費を払わなければならないことは分かっていたが、現在の家族との生活に余裕が無く、できれば支払わずに済ませたいとの気持ちから、これまで請求を無視していたと話しました。
 しかし、太郎さんの養育費の支払義務は裁判の結果決められたもので、これを逃れることはできないこと、今後も支払わずに年月が経つと遅延損害金が増えたりしてかえって不利になることを話して支払うように説得したところ、不払い分を一括で支払うことは無理であるが、今後の毎月の養育費に上乗せして支払っていくことで和解ができ、和解調書が作成されました。

 この和解によって太郎さんはしばらく養育費の支払いをしていましたが、1年くらい経ったところで支払がされなくなってしまいました。
弁護士が事情を聞こうとして連絡を取ろうとしても返事がありません。

 やむを得ず、日本の裁判所の和解調書により、太郎さんの給料を差し押さえる手続をとり、太郎さんの毎月の給料から法律が定める金額(大体、毎月の給料の手取額の4分の1程度)を、会社が太郎さんの給料から差し引いて、直接弁護士の方へ支払う方法により取り立てることとなりました。
  ところが、それから半年くらいで太郎さんは会社を辞め、その後はどこで働いているか分からなくなってしまいました。
そのため、花子さんへの養育費の不払いは現在も続いたままになっています。

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