弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

子どもの奪い合いについて考える

2007年12月01日 離婚

1.離婚に関しては,いろいろなことが問題になります。財産分与慰謝料子の親権,子の養育費子との面接交渉名字等の問題があります。しかしながら,これらのうちの大部分は, お金で解決できます。
 お金で解決できない大きな問題が,子の親権問題です

2.別居中或いは離婚後の夫婦等の子どもの奪い合いは熾烈なものになることがあります。特に,二人の両親(すなわち,子どもの祖父母)が絡んできた場合は,なおさらです。
 
子どもを二人のどちらが取るかについては,現在の法制上,一応の定めがあり,もちろん,それに対応した裁判制度もありますが,実際は,現に子どもを確保している方が勝ちという現実があります。
 
極端に言えば,子どもを実力で連れ去ろうが,子ども又は子どもの監護者を欺き,当該子どもを自己の支配下に置こうが,例えそれが犯罪であっても,そのことが事実上認められてしまうのです。
 
親権者であっても,そのようなことをすれば犯罪になるという最高裁決定(平成17年12月6日)もあります。この事実は母親が子を抱きかかえる等して家を出た後,父親がその子を連れ戻したという事例でありますが,この最高裁決定は,その父親を未成年者略取罪に当たるとしました。
 しかしながら,この決定に対しては,そもそも母親の行為こそが未成年者拐取罪に当たり父親はその子を連れ戻したに過ぎない,という厳しい批判があります。また,この最高裁決定には,本決定に係る最高裁判事の反対意見があり,子の奪い合いに刑事介入を認めることに疑問を呈しております。


3.次に,子どもの奪い合いとの関連で,そもそも離婚の際に親権者を両親のどちらかに決めなければならないという日本の法制が問題であります。
  両親のいずれもが親権者になることを望んだ場合,どちらかが親権者になり,他方が月1回の面接交渉権を得るというのが一般的な解決のように思いますが,これでは,両親のそれぞれが子と関わる度合いにあまりにも差があります。
 しかも,この面接交渉も,決めても,実際には実施されない場合もあります。離婚はやむを得ないにしても,子どもが両親と関わる度合いは,基本的には離婚前と同じで良いのではないでしょうか。

 なぜ日本では,両親の一方のみしか親権が与えられないのでしょうか。ドイツ,フランス,イタリアでは,離婚後も両親の共同親権であり,離婚前と同じです。イギリスも,離婚後も親のそれぞれが親責任を持ち続けますので,離婚前と同様です。アメリカでも,殆どの州で共同監護の形態の選択を認めております(平成19年11月17日に行われた日弁連主催のシンポジウム資料による。)。
 親の離婚は親の都合によるのが普通であり,子どもには大変迷惑な話です(もちろん,親による子の虐待が行われている場合は別ですが。)。
 両親が離婚したからといって,子どもの,両親との関係が薄れて良い訳がありません。子どもの福祉,健やかな成長のために,日本も共同親権の制度を取り入れるべきです。
 しかしながら,我が国に共同親権制度を取り入れるまでには,まだ時間がかかるでしょう。
 そこで,私は,現時点では,共同親権になるだけ近いような運用を心がけるべきだと考えます。現在殆ど認められていない親権からの監護権の分離や,面接交渉(面会交流)の大幅増等により,共同親権に出来るだけ近い形に持っていくのです。もっと工夫がなされて良いと思います。

4.両親の協議が整わない場合における子の引き渡しに関しては,家裁の調停・審判人事訴訟といった方法のほかに,調停前の仮の措置民事保全手続人事訴訟手続法の仮処分審判前の保全処分人身保護法による釈放命令・仮釈放命令といった手続きがありますが,問題は,実現方法です
 単に決めても,子の引き渡しが現実に実行されないようでは意味がありません。
 子の引き渡しに直接強制を認めるべきかどうかについては意見が分かれているようですが,私は,15歳(遺言可能年齢)未満の子どもについては,場合によっては,裁判所の執行機関による,子の引き渡しの執行を認めるべきだと考えます(子どもの人権に大きく関わってきますので,このことを法律に明定すべきです。)。
 15歳以上の場合は,子どもの意思を尊重すべきでしょう。なお,執行を認める場合には,判決や決定等にその旨を明示すべきです。

5.子どもは,一個の独立した人格を有する人間です。両親の私物ではありません。このことが分かっていない親が多すぎます
 
子どものことを考えれば,自分だけのものにしておくという発想が生まれてくるはずがありませんが,そのように考える親が多いのが現実です。
  子どもの健全なる成長を無視した,親や祖父母の気持ちを満たすためだけの子どもの奪い合いはやめにしましょう。
 子どもを自分だけが抱えるようなことをする親は,いずれ子どもから裏切られることになるでしょう。

                                 以上

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