弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

離婚と借金~具体的事例を通じた雑感②

2006年09月01日 離婚

(2)Bさん(女性・32歳・会社員)は,大学卒業後キャリアウーマンとしてバリバリ活躍してきましたが,仕事のストレスを解消するためにブランド物のバッグや洋服などをたくさんローンで購入し,また,若気の至りでホストに入れあげ,消費者金融からお金を借りて貢いでいました。
 約10年の間に借金は約600万円まで膨み,Bさんは支払が厳しくなっています。それでもBさんはバリバリ働けば何とかなるとタカをくくっていましたところ,勤務先の会社の業績が落ちて給料・ボーナスが下がり,いくら頑張っても返済に追いつかなくなってしまいました。 実家の両親も娘は立派に生活していると思い込んでおり,相談することはできません。
 そんな折,Bさんに素敵な結婚話が舞い込んで来ました。
 友人と会食した際に同席した男性がBさんに一目惚れし,プロポーズしてくれたのです。
 結婚話はトントン拍子で進んで行きましたが,Bさんは結婚話がポシャってしまうのが怖くて自分の借金のことはどうしても話せないでおりました
 しかし,結婚して同居が始まれば隠し通せるものではないので,結婚式まであと2か月という段階に至って,Bさんは乙弁護士に相談する決心をしました。

 Bさんは,乙弁護士に対して「実家にも彼氏にも会社にも,誰にも知られることなく借金の問題を解決したい。彼氏にばれたら結婚できなくなってしまうし,結婚後にばれたら離婚されてしまう。」と泣き出さんばかりに相談しました。

 乙弁護士は,まず債務整理の依頼を受けた時点で各債権者に受任通知書を発送することになるため,誰かが連帯保証人になっている場合には,その人に一括請求が届くことになるため,例えば実家のお父さんが連帯保証人になっていたらばれてしまう旨説明しました。
 しかし,幸いにもBさんの債務には連帯保証がついていませんでしたので,この点は問題なしです。
 次に,乙弁護士は,弁護士が債務整理の依頼を受けた時点でBさんの信用情報登録機関に「弁護士介入の事故情報」が掲載され,5~7年間新たな借り入れ行為ができず,例えば,Bさんが,将来旦那さんのローンについて,奥さんとして連帯保証する事になった場合,審査で跳ねられてしまう可能性があるため,その場合には疑われてしまう旨説明しました。
 Bさんはホストと付き合っていた頃に,借金を払わないと「ブラックリスト」に載るという話を聞いていたので,乙弁護士の説明をすぐに理解することができましたが,彼氏が将来ローンを組むことは予想できるので少し心配になりました。
 乙弁護士は,「彼氏には『昔,払い忘れていたことがあったからかも。テヘヘ!』といって誤魔化すしかないね。」とアドバイスしてくれました。
 そして,乙弁護士は,今回のBさんの事案は破産申立が相当の事案なのですが,裁判所が破産手続開始決定と免責決定を行った場合には,それぞれ官報に掲載されることになるので,形式的にはBさんの破産・免責については公になってしまう旨説明しました。ただ,夥しい数の破産者の中からBさんを探し出すのは容易なことではないので,事実上官報公告自体からばれることはないだろうと説明してくれました。

 もっとも,官報をもとにして破産者に対してダイレクトメールを送りつけるヤミ金が横行しているため,疑われる可能性はあると釘を刺しました。

  結局Bさんは乙弁護士に債務整理を依頼して,結婚式前までに免責決定を受けることができ,晴れ晴れとした気持ちで結婚生活を始めることができました。
 Bさんのケースは婚姻前の事案でしたが,婚姻後まで自分の借金を配偶者に隠し続けているケースもたくさんあります。これらのケースにおいても先ほどの乙弁護士の説明が妥当しますので,くよくよ悩んで配偶者に疑念を持たれ仲が悪くなる前に,弁護士会のクレサラ相談に相談されてみると良いでしょう。

(3)Cさん(男性・38歳・会社員)とDさん(女性・34歳・派遣社員)は婚姻期間7年の夫婦です。
 Cさんは学生時代から車の改造が趣味でしたが,結婚後も借金(総額600万円)をしてまで趣味に没頭していました。
 Dさんはブランド物の洋服やバッグを買い歩くことが趣味で,やはり結婚後も借金(総額400万円)をしてまでブランド物を買い漁っていました。
 また,二人は2分の1ずつの共有名義でマンションを所有しており,住宅ローンは主債務者がCさんで,連帯保証人がDさんとなっております。二人の仲は今では冷え切っておりますが,二人とも借金が増え過ぎて首が回らない状況になってしまったので,二人で丙弁護士に相談に行きました。

 丙弁護士は,CさんとDさんが二人揃って相談に来たので,二人仲良く債務整理の手続を進めて行くとばかり思っていました,相談を進めていく最中に,二人はお互いの浪費や性格上気に入らないところなどを罵り合い始め,それぞれお互いに隠れて愛人まで作っていると主張します。そして,しまいには二人とも先に離婚してから,債務整理の手続を行うと言い出しました

 丙弁護士は,「もちろん先に離婚をすることも可能であるが,資産状況や借金が増大した理由を正確に把握するためにも二人の話を聞いた方が良いし,また離婚後に債務整理をする際に住宅の任意売却の手続が円滑に進まないことがあったりすることがあるので,できれば婚姻中に債務整理をしてしまった方が良い。また弁護士費用も夫婦の関連事件とした方が安くなる」とアドバイスしました。
 しかし,二人の気持ちは収まらず,結局二人とも丙弁護士との法律相談後に別居して,離婚の話合いを続け,調停の申立まで行われているとのことです。
 確かに,法的手続の円滑さや費用面の有利さから見れば丙弁護士のアドバイスのとおりなのですが,夫婦の感情的な溝が深まっていると,なかなかそこまで割り切って考えることもできないものなのでしょう。

4.問題点(双方受任の場合の利益相反等)

前述したCさんDさんの場合には,受任前に既に夫婦仲が悪くなっており,双方ともに受任しませんでしたので特に問題になりませんでしたが,夫婦揃って弁護士に債務整理を依頼してから,その後に夫婦仲が悪くなる場合には問題が生じることがあります。

この場合,弁護士は債務整理の受任の際に夫婦の借金の原因を詳しく事情聴取しておりますので,夫婦の仲が悪くなった事情に該当する部分も少なからず把握しています。
 そのため依頼者としても気軽に離婚の相談をしやすいのでしょうが,その夫婦の一方から他方に対する離婚の相談を受け,アドバイスをしたり,離婚事件を受任するようなことは許されません。
 その弁護士は相手方である他方の債務整理の事件も既に受任しているので,一方に有利で他方に不利な扱いをすると,不公平となり,他方との信頼関係が保てないことになるからです。
 このような場合には,その弁護士には「債務整理」だけ依頼をしたのだと割り切ってもらい,離婚については弁護士会に相談するなどして,お互いに別の弁護士を依頼して頂くことになります。

夫婦の債務整理の依頼を受ける弁護士の立場からすれば,せっかく借金の問題が無くなるのだから二人で幸せに暮らして欲しいというのが希望ですが,うまく行かず離婚が避けられない場合でも,少なくとも債務整理の件がキッチリ済んでからにして欲しいというのが本音です。

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