弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

離婚時の年金分割

2006年07月01日 離婚

(1) 厚生年金保険法が改正され、離婚をした場合における特例が設けられました。その内容は以下の通りです。

これまでは、離婚をしても年金は、それぞれの受給権者が取得し、その年金額の分割は、できませんでした。しかし、上記の厚生年金保険法改正により、それが可能となりました。
その趣旨とするところは、「婚姻期間中に支払った保険料は、夫婦で共同して支払ったものである」との基本認識にあり、それを法律に明記しているのです
(厚生年金保険法第78条13)

厚生年金の仕組みを説明しますと、60歳から64歳まで受ける特別支給の老齢厚生年金は「定額単価×加入月数」で計算される定額部分と在職中の給料に比例している報酬比例部分からなっています。
  定額部分は所得再分配の機能を有しており、65歳以降の老齢厚生年金は報酬比例部分となり、定額部分は老齢基礎年金に移行されます。
 
厚生年金では、毎月の月給及び賞与をもとに保険料や年金額を計算します。しかし、各人の給料体系は様々で、かつ変動するため、そのまま使うのは事務的に煩雑であるので、報酬月額・賞与額を一定の幅で区分して仮の報酬月額・賞与額を決め、計算の基礎にしており、これを標準報酬(標準報酬月額及び標準賞与額)といっています(以上、厚生労働省ホームページ年金用語集より)

  このうち、今回の年金分割については報酬比例部分のみであり、基礎年金の額には影響しません

また、年金分割の方法としては、年金額そのものを分割するのではなく、離婚する夫婦二人の年金額を計算する基になる婚姻期間中の保険料納付額(標準報酬記録)を分けることになります。
  婚姻期間中の標準報酬を再評価したものの総額が多い人が少ない人に対して保険料納付額(標準報酬記録)の一部をあげる形をとっています。

厚生年金の被保険者または被保険者であった人で、納付記録あげ る側の人を「第1号改定者」一般的に「夫」の場合 が多いが、「妻」となる場合もあります)といい、納付記録をもらう側を「第2号改定者」(第1号改定者の配偶者であった人)といいます。

この年金分割制度は、平成19年(2007年)4月1日以前の離婚は対象となりません。
また、
平成19年4月1日以降の離婚についても2段階の制度の改正となっています。以下にそれらを説明します。

(2) 平成19年4月1日以降平成20年3月31日までの間の離婚の場合
 
年金を分割するには当事者間の合意または家庭裁判所の決定によることが必要です。

当事者間の合意によるときは、それにより年金の按分割合を決め、その内容を公正証書にしておき、離婚後2年以内に社会保険事務所へその按分割合を記載した公正証書を添付して年金分割の請求をする必要があります。
 
当事者間の合意ができないときは、家庭裁判所に決定してもらうことになります。この場合、家庭裁判所では、当該対象期間の保険料納付に対する寄与の程度その他一切の事情を考慮して、按分割合を定めることができるとしています(厚生年金保険法第78条の2第2項)

②分割の対象となる期間
  分割の対象となる期間は、婚姻期間中であり、分割の割合は、平成19年4月1日以降平成20年3月31日までは、婚姻期間中の夫婦の保険料納付記録に見合う年金の合計の2分の1を限度として、その範囲内で協議して決めることになります。
  婚姻期間が短期間の場合は、分割対象が少ないことや将来的な年金の不透明なこともあり、離婚の際にはあまりこだわる必要がないと思います。
  また、婚姻期間が長い場合には、一般的には平成19年4月以降に離婚した方が得であると言われておりますが、年金給付を受けるまでまだ期間があるときは、それまでの保険料は自分で支払わねばなりませんし、また離婚すれば、専業主婦の場合には、それまで夫の収入から支出していた生活費を自分で負担することになりますので、離婚にあたっては、年金分割による具体的な受給額がどのくらいになるかを十分検討しておく必要があります。

また年金分割は、専業主婦(※)の場合と共働きの場合とでは、若干異なります。
   
専業主婦の場合は夫の保険料納付額のうち、婚姻期間中の部分を2分の1を最大限度として分割してもらうことができます。 

共働きの夫婦の場合は夫婦の保険料納付額のうち、婚姻期間中の部分を2分の1を最大限度として分割してもらうことができます。具体的には、保険料納付額を半分にして、通常、夫から妻へ保険納付記録を移転することになります。
 
※(第2号保険者(国民年金法第7条第1項第2号の厚生年金保険法の被保険者
  等)に扶養されている配偶者のうち20歳以上60歳未満の者(国民年金法第7条
  第1項第3号の第3号保険者)

③年金分割の対象となる年金は厚生年金のみ

年金分割は厚生年金だけであり、国民年金には適用がありません。国民年金は、離婚をしてもしなくても夫婦それぞれが基礎年金を受けるだけで変わりがないからです。

平成19年4月1日以降平成20年3月31日までの離婚

第3号の被保険者期間

決 定 方 法

分割(按分)割合

結婚から離婚まで
(平成20年3月31日まで)

当事者の合意または
家庭裁判所の決定

最大2分の1


(3) 平成20年4月1日以降の離婚の場合
  年金分割は、当事者間の合意若しくは裁判所の決定が必要であると述べましたが、平成20年4月1日以降の離婚の場合には、平成20年4月1日以降の結婚基幹部分については、当事者間の合意がなくても、例えば専業主婦では夫の保険料納付額の2分の1が自動的に分割されます。
 
 離婚の時期を平成20年4月以降に先延ばししたら、夫の合意がなくても結婚していた期間の全部について、2分の1 もらえるようになると勘違いされている方がいますが、平成20年4月1日前の第3号被保険者期間については、当事者間の合意か家庭裁判所の決定が必要であることは変わりませんので注意してください。
 

平成20年4月以降の離婚

第3号の被保険者期間

決 定 方 法

分割(按分)割合

結婚から
平成20年3月31日まで

当事者の合意または家庭裁判所の決定

最大2分の1

平成20年4月1日から
離婚まで

法 定(合意不要)

2分の1固定

(4) 年金分割手続き後に元配偶者が亡くなった場合
 
受給金額等に影響はありません。
  また、既に年金の受給を受けている人であっても年金分割はできます。老齢厚生年金を受けている人について、分割請求がされた場合は、請求のあった日の属する月の翌月から年金額が改定されます。

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