弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

夫の暴力を理由に離婚が認められた事例 その①

2005年01月25日 離婚

離婚訴訟の提起まで                                                              

1花子さんは、サラリーマンの夫と、小学生の子供二人の4人家族です。
  夫は、名前を聞けば誰でも知っているような一部上場企業に勤務しており、花子さんは結婚後子供ができてから仕事を辞めましたが、下の子供が小学校に入学後はパートで働いています。
  花子さんの夫は、結婚後、お酒を飲んだときに怒って興奮すると暴力を振るうことがありました。子供が産まれる前は、花子さんも夫と本気で喧嘩をしてつかみ合いになったりすることがあり、一度は頭を殴られて気絶して、救急車で病院に運び込まれるようなこともありました。
  その後は、花子さんも夫になるべく逆らわないようにし、夫も花子さんの体に向けて暴力を振るうこともなくなり、又
、子供が産まれてからは育児に忙しかったこともあって、特に大きな暴力を振るわれることもなく過ぎていきました。

子供の小学校入学の頃に花子さんの夢だったマイホーム(マンション)を購入しました。
  花子さんの実家のそばにあり、花子さんの父親が頭金の一部を援助してもくれました。
  しかし、夫はそのマンションを気に入らなかったようで、何かというと一戸建ての方がよかった、とか、不満を口にするようになりました。さらに、夫の会社が他社と合併するなど職場の環境が変わったこともあり、飲酒の量が増え、明らかにストレスが増えた感じでした。
  会社の健康診断で、肝臓の状態が良くないとの診断が出たので、花子さんはお酒を控えるように再三注意しましたが、夫は全く意に介さず、以前にもまして飲酒する様子を見て、花子さんは夫が自分と子供達に対する責任感を持っていないと感じました。
  このような状況で、花子さん夫婦には口げんかが耐えなくなり、夫は口で言い負かされると暴力的な言動で対抗するようになりました。ただし、以前の救急車のことが頭にあり、花子さんの身体に直接暴力を加えることはありませんでしたが、マンションの戸や壁、電気製品などを次から次に破壊していき、花子さんと子供達が寝ている部屋の電気スタンドまで拳でたたき壊してしまいました。
  夫の暴力は日々エスカレートしていき、子供達も夫が家にいるときは怯えるようになりました。家庭の雰囲気がどんどん悪くなっていく中で、このままでは自分や子供達がいつ夫の暴力の標的になるかもしれないと思い詰めた花子さんは、これ以上夫と同居することはできないと決意し、子供達を連れて家を出ました。
  家を出た直後は実家に身を寄せましたが、夫に所在を知られないようにと、父親名義で部屋を借りてもらい子供達と3人で引っ越しました。
  夫は何回か花子さんの実家に連絡をしてきましたが、自分の暴力について詫びることもなく、真剣に花子さん達に戻ってきてほしいと考えているようにも思えませんでした。

花子さんはマンションを出るときから夫との離婚を決意していました。
  本で調べたり、電話で問い合わせたりしながら、離婚をするためには、まず家庭裁判所で調停を行い、調停で離婚の合意ができない場合に離婚訴訟を提起することができることを知りました。
  そこで花子さんは、自分で家庭裁判所に行って、申立書を作成し、離婚調停を申し立てました。調停は申立をしてから約1ヶ月後に第1回の期日が指定されました。
  調停では、男女二人の調停委員が、まず、花子さんの話を聞き、その間夫の方は待合室で待っていました。次に、夫が調停委員から花子さんの意向を聞いている間、花子さんの方が待合室で待っていました。
  しかし、夫は調停委員に対し、「離婚するつもりはない。妻と子供達に戻ってきてほしい。」と言うばかりでした。他方、花子さんの方は離婚の決意が固かったので、調停委員は裁判官とも相談した結果、これ以上調停を続けても話し合いがつきそうにはないと判断し、離婚調停手続きは「不成立」として終了となりました。

調停で離婚ができなかったので、残る道は離婚訴訟を提起、して、離婚を認める判決を取るしかありません。
  調停は自分で申立をして行いましたが、訴訟となると、離婚が認められる根拠について法律的な主張を記載した 「訴状」を作成して提出したり、主張する事実について証拠を提出したり、尋問・証言をしたり、といった訴訟活動が必要であり、弁護士に依頼しないと無理である聞きました。
  でも花子さんは特に知っている弁護士がいなかったので、弁護士会の法律相談センターに行って法律相談をし、その時相談をした弁護士に訴訟の代理人になってもらうように依頼をしました。
  その相談では、花子さんの言い分からは、夫の暴力は民法770条1項5号に規定されている「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当し、判決で離婚が認められる可能性が高いこと、小学生の子供達についても母親である花子さんが親権者となることができそうであること、又、これまで受けてきた暴力や離婚をせざるを得なくなったことについての慰謝料が請求できること、夫との同居の間に形成した財産があればその半分を財産分与として請求できること、離婚後は夫は花子さんの生活費を支払う必要はないが、子供達が成人に達するまでの間は養育費を支払う義務があること、但し、夫が希望すれば子供達との面接交渉を認めなければならないことを説明されました。
  さらに、夫と別居してから全く生活費を受け取っていないので、今後、離婚が成立するまでの間の生活費を請求できるということなので、その請求も依頼することにしました。

離婚訴訟の方は、弁護士が作成した訴状の中で、夫の暴力行為の外に、夫の性格上の問題点も指摘して、今後夫婦として生活していくことはできないので離婚を認めてもらいたいことを訴えました。
  併せて、子供達の親権者を花子さんにしてもらうこと、子供達の養育費として、一人あたり月5万円を支払ってほしいこと、さらに、離婚に至った原因は被告にあるとして、慰謝料を金300万円、財産分与として被告がもし現時点で勤務先を退職した場合に支払われる予定の退職金の半分である280万円とそれまで積み立てていた学資保険の解約返戻金の半分の100万円の支払いも請求しました。
  これに対して、夫の方も弁護士を依頼して、花子さんの請求について全面的に争ってきました。

 

 
(以下、来月のコラムにつづきます。)

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