弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

親族の扶養

2014年12月01日 親子

1 「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養する義務がある」とされています(民法877条1項)。

この扶養の内容については生活保持義務と生活扶助義務という区別が一般にされています。

生活保持義務とは、自分と同じ程度の生活させる義務で、夫婦間や未成年の子に対する扶養などはこのような生活保持義務であるとされています。

これに対して、生活扶助義務とは、自分にふさわしい程度の生活を維持した上でなお余裕がある場合に最低限の生活を維持させる義務で、他の親族に対する扶養はこのような生活扶助義務であるとされています。

もっとも、このような区別は、同じく扶養といっても親の未成年の子に対するものとそれ以外の親族間のものでは程度が異なるということを言っているに過ぎず、このような区別から演繹的に扶養の内容が明らかになるものではありません。

 

2 扶養の必要がある親族がいる場合、程度はともかく親族による何らかの扶養が自発的に行われていることが多いでしょうが、近時は、親族関係の希薄化や経済的余裕のなさ(平均寿命が延びている中で、高度成長期のような将来的な収入増加を見込みにくい経済状況の下では、将来的な不安は以前よりも遥かに大きくなっています)などから扶養がされない場合も増えてきているようです。

  扶養についての協議ができない又は整わないとき、扶養の順位、程度又は方法については家庭裁判所が審判によって定めることになります(民法878条、同879条)。扶養の程度又は方法の判断においては、扶養を要する者の必要性と扶養義務がある者の資力などの一切の事情を考慮して判断されることとされています(民法879条)。

 

3 親族の扶養義務は公的扶助との関係でも近時注目されました。人気お笑い芸人の親族が生活保護を受けていたことが契機です。

生活保護法では民法の扶養は生活保護法による「保護に優先して行われるものとする」とされており(生活保護法4条2項)、これについては旧生活保護法が親族の扶養を受けられることを生活保護受給の欠格事由としていたことを改正したものであることから、親族の扶養が受けられる場合には生活保護を受給できないという意味ではなく、親族の扶養が行われた場合には生活保護の必要性なくなるという意味であると一般に理解されています。

もっとも、生活保護の現場では、「親族から援助してもらいなさい」などと言って生活保護の申請を受け付けない「水際作戦」と呼ばれる対応をするところも少なくなく、一時期問題となりましたが、現在でもそのような対応が散見されます。

 

4 親族の扶養について従前裁判所に行ってまで争われることはあまりありませんでしたが、扶養がされないケースの増加と権利意識の高まりを受けて、今後増加するかもしれません。

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