弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

親子関係についての最高裁判決

2014年10月01日 親子

 今回は、最近、最高裁判所が家族(親子や相続など)について重大な判決を出していますので、ご紹介したいと思います。

 社会の変化や医学の発達のスピードが加速しているのに反して、法律・裁判所の対応は遅いのではないかとの感想を持っている方も多いと思います。

 

1 婚外子の差別問題

  マスコミの報道でご存じだと思いますが、昨年の9月に、最高裁判所が婚外子(結婚していない男女の間に生まれた子)の相続分について、嫡出子の相続分の2分の1と定めていた民法の規定を、憲法が保障している法の下の平等に違反して違憲であると判断しました。この判決は裁判官全員(15名のうち判決に関与した14名の裁判官)の意見が一致したものです。

  婚外子の相続分を半分にしていたのは、法律の婚姻制度を尊重するという考えに基づいていました。最高裁判所も、平成7年に判断したケースでは、法律婚を尊重するという考えの下、憲法違反ではない(合憲である)としました。

  しかしながら、生まれてきた子どもについては、自分が婚外子であることについて何らの責任があるわけではなく、相続分を半分にされるというのは不当な差別であるという考え方が強く主張されていました。

  他方、夫婦間の子どもとしては、婚外子の存在により家庭が精神的な打撃を受けてきたこと等を理由に、相続分に差異を設けていることについて正当であると主張しました。

  最高裁判所は、以上のような議論に対して、婚外子の出生数や離婚・再婚件数の増加など婚姻、家族の在り方に対する国民意識の多様化が大きく進んだこと、諸外国がすでに婚外子の相続の格差を撤廃していること、日本国内でも婚外子の相続分を嫡出子と同等にすべきだという議論が起きていることを挙げ、法律婚という制度自体が定着しているとしても子にとって選択の余地がない事柄を理由に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、権利を保障すべきだという考えが確立されてきていることを理由に、婚外子だからと言って相続分に差異を設けることは法の下の平等原則に反するとしたものです。

  ただし、最高裁判所は、すでに遺産分割が終了している場合のように決着済みの同種事案にはこの違憲判断は影響を及ぼさない、すなわち、この判決によって遺産分割をやり直すことはできないとしています。これは、すでに決着がついている相続問題について蒸し返すことを認めると、法的安定を損ない社会が混乱することを防ぐという配慮のためです。

  この判決の後、民法の該当部分は昨年12月に改正され、婚外子も嫡出子と同等の相続分が認められています。

 

2 DNA鑑定と親子関係

  今年の7月14日には、最高裁判所は、DNA鑑定で血縁が否定された場合でも、法律上の父子関係は無効にできないとの判決を出しました。

  民法には”嫡出推定”つまり、妻が婚姻中に妊娠した子を夫の子と推定するという規定があります。これは、扶養義務を負う父親を法的に明確にし、安定した親子関係を構築し、子の保護を図るのが目的です。

  しかし、裁判になったケースは、妻が夫と婚姻中に別の男性と交際して妊娠・出産し、子は血縁上の父及び母と同居して生活しているという事案で、DNA鑑定の結果、子の血縁上の父親はその交際男性であることが確認され、妻側が夫に対し、父子関係の取り消しを求めていました。

 このケースについて、最高裁判所は、血縁関係がないことが明らかであっても、子の身分関係の法的安定を保持する必要性はなくならないと指摘し、DNA鑑定では民法の嫡出推定を否定することはできないとしました。嫡出推定の規定を厳格に適用し、父子関係について定めた民法の枠組みを重視した判断といえます。

 こちらの判決については、反対意見を表明した裁判官もいて、「血縁関係のない人と法律上の父子関係を残すことは、子の成育にとって心理的、感情的な不安定要因を与えるのではないか」とか、「嫡出推定の規定と、血縁関係を戸籍にも反映させたいと願う心情を調和させる必要がある」との意見がつけられていました。

  この民法の嫡出推定の規定は、明治時代に設けられたもので、DNA鑑定といった技術は存在していませんでした。ところが、現在はかなり安価かつ手軽に、正確な親子鑑定を行うことができるようになっています。それにもかかわらず、明治時代の法律をそのまま適用するのでは、科学技術の進歩と法制度との間に乖離が生じ、社会の実情に沿わなくなっていると言えるでしょう。そのような規定を杓子定規に適用するのでは、裁判所の判決に説得力がなくなり、当事者も納得しがたい状況になってしまうかもしれません。

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