弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

ハーグ条約について~その2~

2014年07月01日 親子

2012年3月1日付の本コラムで、ハーグ条約(国際的な子の奪取の民事面に関する条約)についてご説明いたしましたが、2014年4月より、日本でも、このハーグ条約が発効しました。

国内の法整備としては、2013年6月に、「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律」(以下、「ハーグ条約実施法」といいます。)が成立し、ハーグ条約発効と同時に、2014年4月より施行されました。

そこで、今回は、ハーグ条約実施法の概要をご説明し、不法に連れ去られた子供の返還の手続を、簡単にご紹介したいと思います。

 

子供の返還を実現するための方法の1つとしては、まず、外務大臣に対し、外国返還援助申請(ハーグ条約実施法4条)を行い、外国返還援助決定が得られた後、家庭裁判所(現在のところ、東京家庭裁判所と大阪家庭裁判所の2つの家庭裁判所のみが管轄裁判所となっています。)に子の返還申立てを行うことがあげられます(同法26条)。

他方、ハーグ条約は、子供の任意の返還や友好的な解決が図られるような措置をとることを求めており、ハーグ条約実施法9条でも、当事者の合意により子供の返還が行われるよう、外務大臣が、「協議のあっせんその他の必要な措置をとることができる」としています。

そこで、外務省では、東京弁護士会、第一東京弁護士会、第二東京弁護士会、沖縄弁護士会及び公益社団法人総合紛争解決センターにADR事業を委託しています。また、調停手続でも、話合いでの解決を目指すことが可能です。

このような整備がされておりますので、実際には、家庭裁判所に子の返還申立てをし、かつ、ADRや調停手続を利用して、当事者が話合い、できる限り平和裡に、子供の返還など紛争の解決が図られることとなりそうです。家族間の問題ですので、このような配慮がされているのです。話合いがまとまれば、子供の返還や、その後の面会交流の方法等について、調停条項や覚書が締結されて解決となり、話合いがうまく行かなければ、家庭裁判所の決定により、解決がされることになります。ハーグ条約実施法134条以下では、子供の返還の強制執行についても定められています。

 

返還申立ての対象となるのは、日本にいる16歳未満の子です。また、常居所地(通常居住していたところ。連れ去られる前に住んでいたところが多くなると思われます。)の法令によれば、連れ去りや留置が申立人の子供についての監護の権利を侵害しており、かつ、連れ去りや留置の開始のときに、常居所地国がハーグ条約締結国であることが要件となります(ハーグ条約実施法27条)。

 

返還申立てが認められるための要件は、ハーグ条約実施法28条にも規定があり、以下に条文を抜き出しますが、1~6の事由のどれかがあると認められるときには、原則として、子供の返還は認められません(但し、1~3と5については、事由があっても、一切の事情を考慮して子供の返還を認めることが子供の利益に資する場合は、返還が認められます)。

 

 1 子の返還の申立てが当該連れ去りの時又は当該留置の開始の時から1年を経過した後にされたものであり、かつ、子が新たな環境に適応していること。

 申立人が当該連れ去りの時又は当該留置の開始の時に子に対して現実に監護の権利を行使していなかったこと(当該連れ去り又は留置がなければ申立人が子に対して現実に監護の権利を行使していたと認められる場合を除く。)。

 申立人が当該連れ去りの前若しくは当該留置の開始の前にこれに同意し、又は当該連れ去りの後若しくは当該留置の開始の後にこれを承諾したこと。

 常居所地国に子を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼすことその他子を耐え難い状況に置くこととなる重大な危険があること。

 子の年齢及び発達の程度に照らして子の意見を考慮することが適当である場合において、子が常居所地国に返還されることを拒んでいること。

  常居所地国に子を返還することが日本国における人権及び基本的自由の保護に関する基本原則により認められないものであること。

                 (以上ハーグ条約実施法28条1項1号~6号)

 

 4月から始まった新たな制度であり、まだまだ手探りの状態ですし、実際に調停やADRで話合いがまとまり、子供の引渡しや、その後の面会交流について取り決める際には、条項について詳細な検討が必要です。弁護士に依頼し、手続を進めていただくのが、迅速な解決につながるものと思います。

 

 

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