弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

事実上の父親に対する養育費の請求

2014年05月01日 親子

以前、妻子のある男性との間にできた子どもの養育費を請求したいという相談がありました。認知がされているのかどうか伺うと、認知はしてもらっていないということでした。つまり、事実として父親(生物学的な父親)である男性に対して養育費を請求したいというご相談です。 

 

1.養育費を請求するにはどうしたらいいか

 法律上の婚姻関係にない男女の間にできた子ども(嫡出でない子)について、父親に養育費を請求するためには、本来であれば父親の認知が必要です。嫡出でない子の場合は、父親が認知することによって初めて、法律上の父親になるためです(民法779条)。ですので、まずは、男性による任意の認知(認知届を役所に提出してもらいます。)を求め、応じてくれない場合は調停を申し立て(調停認知)、調停が成立しない場合は訴訟を提起する必要があります(裁判認知)。

 このように、認知によって法律上の父子関係を発生させた後に、その男性に対して養育費を請求することができるようになります。

 養育費の請求は、交渉で任意に応じてもらえない場合は家庭裁判所に調停を申し立て、調停が成立しない場合は家庭裁判所の審判手続に移行します。 

2.認知をしなくても養育費を請求できるか

このように、養育費を請求するためにはまず認知してもらうことが原則です。

 また、認知を得て法律上の父親とすることによって、子どもに父親の相続権も発生します。特に、平成25年9月4日の最高裁判所の大法廷判決で、嫡出でない子の相続分を嫡出である子の相続分の2分の1としていた従前の民法の規定について、法の下の平等を定めた憲法に違反するとの判断が出たのは記憶に新しいところです。平成25年12月5日には、この点について民法の一部を改正する法律が成立し、同月11日に公布・施行され、同年9月5日以降に開始した相続については、嫡出である子も嫡出でない子も平等の扱いとなります。ですので、子どものことを思えば認知を得た方がいいということができます。

 しかし、生き方や価値観は人それぞれですし、その男性の法律上の婚姻関係を壊したくないとか(認知をすれば、戸籍に記載されます。)、男性の妻から女性に対して慰謝料請求されるのを避けたいといった事情もあるでしょう。妻に知られたくないからということで、男性の方で相場より高めの金額を支払うモチベーションにつながることもあるかもしれません。その結果多めの金額を支払ってもらえるならば、子どもにとって利益になる場合もありえます。子どもが大きくなった時に、改めて父親に対して認知を求めることも可能です。

 事実上の父親が子どもの父親であることを争っていない場合は、話合いによって支払いの約束を取り付け、公正証書を作成して万が一支払われなくなった時に強制執行が可能なように備えておくことが有益です。もっとも、公証人役場で公正証書を作成するにあたり、「養育費」として定める場合には、法律上の親子関係を明らかにするために戸籍謄本の提出が求められますので、事実上の父親の場合は法律上の「養育費」として定めることはできないことになります。

3.養育費の性質

ところで、養育費というのは、貸金債権といった通常の債権と異なり、法律上保護されています。つまり、子どものために、より確実に支払いがなされるように優遇されているのです。

例えば、養育費の支払義務を負っている者が破産手続を取ったとしても、養育費については税金と同様に免責されません。また、強制執行する場面でも、相手方が期限の到来した分の養育費を支払わない場合にその給料等を差し押さえるときには、将来の養育費分についてもまとめて強制執行することができます。さらに、給料の差押えにおいては、通常の債権ならば債務者の最低限の生活への配慮から、原則として給料の4分の1しか差押えできないのですが、養育費の場合には、給料の2分の1まで差押えをすることが可能です。このような直接強制のほか、間接強制の方法(相手方が履行しない場合には一定の制裁金を支払うよう裁判所が命じて、履行を心理的に強制する方法)によって支払いを求めることも可能です。

このように法律上「養育費」が優遇されていることからしても、父と母が離れて暮らす状態にある子どもにとって、養育費がいかに重要かということがわかるかと思います。

 

4.おわりに

家族の形態が多様化している今日、認知を得ずに事実上の父親に対して養育費を請求したいという場合も少なくありません。そのような場合には、メリット・デメリットを良く検討しておく必要があります。







 

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