弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

親子の縁

2010年04月01日 親子

  先日法律相談を担当したときのことです。偶然立て続けに「父親と親子の縁を切るにはどうしたらよいですか?」というご質問を受けて驚きました。ひと昔前のテレビドラマでは、父親が息子に「お前のような息子は勘当だ。二度とこの家の敷居をまたぐな。」と怒鳴りつけたりしていましたが、最近は子どものほうから父親と縁を切りたいと考えるのかと思うと少し切ない気持ちになりました。

さて、相談者Aさんの母親は、夫の暴力とギャンブルが原因で25年前にAさんの父親と離婚しました。以来Aさんは母親の女手一つで育てられ、父親とは没交渉、どこで何をしているのかも知らずに暮らしてきました。現在、Aさんは結婚して妻との間に小学生の子供が1人、苦労して育ててくれた母親も同居して幸せに暮らしています。

ところが先月、突然父親の姉から電話があり、父親が危篤で余命幾ばくもないことを知ら されました。Aさんが複雑な気持ちで父親を訪ねると、父親は既に意識がなく話しができる状態ではなく、一人暮らしをしていたアパートの部屋にはみるべき資産はなく、サラ金からの督促状がたまっている有様でした。Aさんとしては、今さら25年間何もしてくれなかった父親の世話をしたり、借金の後始末をさせられたりするのではたまったものではない、と考えて、「親子の縁を切りたい。」という相談になったようです。

Aさんの気持ちは理解できないではありませんが、法律上、実親子の親子関係を解消する方法はありません。夫婦間なら離婚、養親子間であれば離縁によって関係を終わらせることができますが、血族関係を解消することはできません。

従って、もし父親が遺言なしに亡くなって相続が開始すれば、相続人になりますし(民法8871項)、Aさんには父親を扶養する義務があります(民法877条)。

Aさんの父親の資産状態は明らかではありませんが、サラ金からの督促状がたまっているところをみると、さしたる財産はなく借金のほうが多いかもしれません。そのような場合、Aさんが父親の債務を相続したくないと考えるのであれば、相続放棄の手続をとる必要があります(民法915条)。相続放棄をするには、相続人が自己のために相続の開始があったことを知ったときか3か月以内に、家庭裁判所に対して相続放棄の申述をしなければなりません。

 また、扶養についてですが、直系血族及び兄弟姉妹は相互に扶養する義務があります。相談のケースで、Aさん以外にも父親の姉などAさんの父親を扶養すべき義務のある者が数人いる場合、扶養の順序は当事者の協議によって定められ、当事者間に協議が整わないとき、または協議をすることができないときは、家庭裁判所に決めてもらうことになります(民法878条)。扶養義務者として、どの程度、あるいはどのような方法で扶養するべきかが問題となりますが、この点も当事者間に協議が整わないとき、または協議をすることができないときには、家庭裁判所が、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮してこれを定めるものとされています(民法879条)。

扶養の程度に関しては、夫婦間の扶養と親の未成熟子に対する扶養は、原則として婚姻生活の維持それ自体と理解され、生活保持義務とよび、それ以外の者の間における扶養は、一方に生活の余裕がある場合に、その限度において他方に生活の手段を与えれば足りるとして、生活扶助義務とよんで区別する審判例もあります。

以上

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