弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

高齢の方の消費者被害

2011年02月01日 後見

  バブルのころは預金をしていると年利8%とかの金利がついていて、10年も預金をしていれば預金額が2倍になることもありました。しかし、バブルが崩壊してからは銀行預金の金利はどんどん下がっていき、最近の金利はないに等しいですね。収入があるうちは金利が低くても自分で稼げばよいと考えられますが、仕事を辞めてわずかな年金と貯蓄で老後の生活費を賄おうと考えると、できるだけ有利な条件で貯蓄を運用したいと思うのは理の当然です。そうした気持ちにつけ込んで、高齢の方が蓄えた預貯金を食い物にする悪質商法が、手を変え品を変えて次々と現れています。かつては、先物取引の被害が多かったのですが、最近は、社債(会社に対してお金を貸すことです。多くは社債券という証券が発行されます。)の購入や事業への出資を求める詐欺的商法が多くなっています。

こうした詐欺的商法の多くのパターンは、まず自宅に環境関連事業をやっているような会社のパンフレットが送られてきます。しばらくすると電話がかかってきて、その会社の社債を欲しがっている人がいる、社債を買ってくれればその人が高く買い取ってくれる、というような話をするのです。

また、すでに投資被害に会った人に電話がかかってきて、ある会社が被害を100%回復してくれるという話しをされることもあります。そして、その会社に電話をすると、被害回復の仕事をするためには自分の会社の社債を買ってもらう必要があると言われるのです。

第三者がすぐに高く買い取ってくれるとか、それまでの被害を100%取り戻してくれるとか聞けば、ついつい話に乗ってしまいます。しかし、こうした悪質業者は、もともとまともな事業をしておらず、社債名目でお金をまきあげるためだけの目的で勧誘をし、お金を支払わせているのです。

悪質商法で取り扱われている社債は、購入をした翌月から毎月利息を支払う約束をしているのも特徴です。すぐに利息が入るのだから良い話だと思わせるためです。また、悪質業者は、警察の目をごまかすために、1~2回は利息を払ってきますが、その後、事業で予想外のトラブルが生じたなどと言って利息の支払をしなくなります。そして、数ヶ月すると全く連絡が取れなくなってしまうのです。

これらの悪質業者は都心の一等地にあるビルをヴァーチャルオフィスとして利用しているのも特徴の一つです。連絡が取れなくなって事務所に行ってみると、全く会社としての実態がなかったことが初めて分かるのです。

被害の金額は、少ない人で50万円程度、多い人では数千万円になることもあります。また、もともと詐欺的にお金をまきあげることを目的にしているので、逃げ足は速く、弁護士に相談した時点では手遅れになっている状態です。裁判をしても取り戻すことは極めて困難で、警察も多くの事件を抱えているために機敏に取り締まってはくれません。

このように高齢の方を狙った最近の悪質商法は、お金を払ってしまうと被害回復は難しく、お金を払わせないようにすることが大切になっています。

そこで、被害を未然に防ぐために成年後見制度を利用するのも一方法かもしれません。しかし、成年後見制度を利用するためには、認知症などのために一般の人に比べて判断能力が低下していることが必要です。被害にあっている方たちの中には外見からは判断能力が低下しているとは見えないほどお元気な方も多くいるので、常に成年後見制度が利用できるわけでありません。

また、被害を未然に防ぐには成年後見人が財産を全て管理している必要がありますが、子どもが成年後見人になるようなときには、よほど認知症が進行しているのでない限り、子どもに自分のお金の管理をしてもらうのを嫌がる方も多いと思います。また、被害にあったことを子どもに話したくないという方も少なからずいます。

成年後見制度は被害を防ぐための一方法ではあっても、被害を絶対に防ぐための方法とは言えなさそうです。

成年後見人をやっているとケアマネージャーとかヘルパーなど、高齢の方の身上監護を担っている方たちの献身的な仕事ぶりに感心させられることがあります。そうした仕事ぶりは高齢の方の信頼感にもつながり、成年後見人よりケアマネージャーやヘルパーを信頼していて、悩み事は全てケアマネージャーやヘルパーに相談をしています。毎日のように世話をしてくれるヘルパーや、連絡すれば親身になって相談にのってくれるケアマネージャーには気軽に相談をしているので、成年後見人としては少し嫉妬を覚えることもあります。

そこで、親が一人暮らしをしていて、なかなか親元に行くことができないときには、介護保険制度を利用して週1~2回の割合でヘルパーに来てもらうようにするのも良いかもしれません。ケアマネージャーやヘルパーは被害を未然に防ぐことはできないかも知れませんが、高齢の方と日常的に接していることから、被害の早期発見につながる可能性があるからです。

介護保険制度を利用するためには、市区町村の役所に介護認定申請をする必要があります。また、介護を要する程度によって受けられるサービスも異なってきます。しかし、申請書はインターネットを通じても入手することが可能で、記入をする事項は多くはなく、申請書は地域ごとに設置されている包括支援センターでも受け付けてくれますので、介護認定申請はそれほど難しいことではありません。

最近の悪質商法については被害回復が極めて困難だとはいえ、早期に発見できれば被害回復ができる可能性もあります。詐欺的商法を始めたばかりだと、悪質業者と連絡が取れて交渉をすることもできるからです。病気と同じで、早期に発見することが容易な解決につながることが多いので、被害が分かったら迷わずに法律相談を受けていただくのが良いでしょう。

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