弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

高齢社会の到来 その② 成年後見

2006年03月01日 後見

 成年後見の申立をした事件

(1)  成年後見制度ができてからの事件を紹介します
 相談者のおじいちゃんが10年程前に亡くなり遺産分割済みのところ、その遺産分割について、兄が遺産分割の約束はしていない、署名押印は他人がしたもので自分は遺産分割協議書に定められた分割金も貰っていない。 だから法定相続分に相当する金銭を支払うように、という兄からの調停の申立が発端でした。

 その主張の内容は、分割当時は既に離婚していた妻が勝手に話をつけてしまい、相続人である自分は金をもらっていないという主張でした。
 直ちに受任し当時の資料を精査して、相手の弁護士に証拠を示して取下げされるように要請しましたが、なかなか話はつきませんでした。
 署名押印した当時の立会人である税理士の陳述書をつけるなどして、本人が署名押印したことを証明しましたが、振込まれた金銭が別れた奥さんに渡ったのかどうかについては、当方には分りかねる問題です。
 最終的には代理人である弁護士の先生より取り下げしてもらいました。

(2)  しかしこの解決直後、相談者から相談が寄せられました。
 調停の相手方である兄が、亡き父の相続財産の殆どを相続しているおばあちゃんにしばしば会いに来て、相談者への不平不満、特におじいちゃんの遺産相続に関して不公平だなどと、いろんなことを話しており心配だというものです

早速おばあちゃんがデイケアサービスに通っている高齢者在宅サービスセンターに行き、おばあちゃんと会って話をしました。
 おばあちゃんには、法律行為の利害得失について、判断する能力が欠けている程度であることはすぐに分かる状況でした。
 相談者は兄からいろいろ難癖を付けられないようにしてほしいという依頼でしたから、当時できたばかりの成年後見の申立をしたらどうかとアドバイスをしました。
 おばあちゃんは相談者を信頼しており、兄が何度も会っていても変な遺言をすることもないと思われたので、急いで手続きを進める必要はありませんでした。

 しかし調停を受任したこともあって、当職は東京家庭裁判所に行って受付で相談をしたところ、成年後見担当の書記官に行って相談されるのがよいとのアドバイスを受け、担当書記官にお会いしたところ、実に懇切丁寧な指導を受けました。
 特に医師の鑑定書作成に関する指導は大変ありがたかったです。後見人候補者についても説明があり、当職が契約をして受任しなければならないのか疑問なほどに丁寧な説明でした。
 手続きや、申立の際のマニュアルもありました。現在は一式書類が完備しており何の不安もなくなっているはずです。
 近時、成年後見の相談に来られる方には、自分で家庭裁判所に行ってくるようにアドバイスをするだけで、半年程するとお礼の電話がかかってくるのですから、弁護士としての仕事も「あがったりだな」と不満を持つほどです。
 しかし担当書記官からもお聞きしたところですが、成年後見諸制度の細部にわたる説明はできないし、実際の適用についてはとても十分な説明はできないので、是非とも弁護士に相談してほしいとのことでした。

 事例から見る成年後見制度

(1) 成年後見の制度ができて、対処の方法も随分変わったというのが当職の認識です。
 バブル時代の事例二つは現在の成年後見制度によって十分な対応ができるものです。

  確かに現在の制度によっても十分に解決できない場合もあります。
 特に事例1では、おばあちゃんに補助を付ける可能性がありますが(高齢者の判断能力に応じて後見、保佐、補助の三種類がありますが、詳細は当家庭相談センターにてご説明いたします)、補助制度では本人の同意が必要です。 おばあちゃんは何を望んでいたのでしょうか。
 事例2では、任意後見契約に関する法律により、任意後見契約を交わして弁護士が任意後見人になり、相談者の老後の生活設計を立てられる状況であったと判断できます。
 また前回述べた補修工事の被害者の事件では、成年後見の請求権者が拡張され、市区町村長も申請できるようになっております。

(2) 今回改正の成年後見制度は、本人の自己決定権を最大限に尊重し、本人保護の理念との調和を目的とするもので、従来と比較し格段に柔軟で利用しやすくなっております。
 更に今回の成年後見制度の施行によって、政府は、地域福祉権 利擁護事業としての福祉サービス利用援助事業や、介護保険法によるサービスの利用等とリンクさせたり、弁護士会や司法書士会では、成年後見センターを設立するなど目覚しい広がりをみせております。

当家庭法律相談センターでも今後この分野にも力を入れたいと考えておりますので、どんどんご希望をお寄せください。

                                                                                                           以 上

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