弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

高齢社会の到来 その① 老人をめぐる事件

2006年02月01日 後見

 今回は、現在急速に進行している高齢化社会における老人問題に関係する事件を紹介したいと思います。
 もっとも高齢化社会の進行は早く、深刻な事件の発生も待ってはくれない状態で、我々が経験する事件以上に現実に発生する事件は驚きです。
 つい先日も、一人暮らし(二人でも同じ)の老人を狙って自宅の補修と称して必要のない工事をして多額の金銭を得、その被害者をたらいまわし状態にして、更に幾度も補修工事費用と称する金銭をせしめていた、という新聞記事がのっていたことは皆様もご記憶のことでしょう。
 このような高齢の被害者がどうなるのか心配されるのであれば、平成1241日施行の成年後見に関する4法律の改正や新設の知識が必要です。
 私が経験したバブル社会の時代に遭遇した老人をめぐる典型的な事件、そして次回は上記法律施行後の事件を紹介しつつ、これからあなたも巻き込まれる高齢化社会に関する知識が必要だなという認識だけでも持っていただけるとありがたいと思います。
 そして何か気になることがあれば、家庭の問題を扱う当家庭法律相談センターに気軽に相談にお越しください。

 バブル時代の事例

(1) 私が所謂居候弁護士をしていた時代はバブル経済が始まり、且つ最高潮に達した時期でした。
 土地がどんどん高騰していき、人の気持ちも現在より拝金思想になっていたように思います。とにかく破産の申立をしたのに、オーバーローンになっていた土地がすさまじい値上がりにより債務者に相当な金額の返金があった(破産申立の時期を伸ばせば破産でなく小金持ちだったということ)という想像もつかない時代でした。
 今回は、バブル時代によくみられた典型的な二つの事例を紹介します。

(2) おばあちゃんの争奪戦
 一例目は、一人の男性が事務所に駆け込んできて「おばあちゃんを取り返してほしい、自分たち家族が留守をしている間に兄貴がおばあちゃんを誘拐した」というものでした。
  駆け込んできた男性に(以下、「相談者」といいます)よく話を聞いてみるとそもそもおばあちゃんは、兄と一緒に同居していたのですが、おばあちゃんが兄の悪口を言い、兄に虐待されていると訴えることから、兄に黙って連れてきたというものでした。
 相談者は、兄が経済的に困窮しており、おばあちゃんの財産を好き勝手にしており、金目の土地も兄の都合で処分されてしまうと恐れておりました。
 相談者は、最後に書いた遺言書が最も意味をもつことを知っており、おばあちゃんを奪い返すため兄の家に侵入して連れてくることを計画しており、そのまま相談を打ち切ると危険な兆候がみられました。
 私たち弁護士は受任し、相談者の代理人として兄に対し、適正な財産管理をするように申し入れをしましたが、その直後相談者は兄の家に侵入しようとして大騒ぎになり、弁護士の私たちにも波及して大変な思いをしました。
 兄の防御がしっかりしていて、おばあちゃんを連れて来られないまま、暫く後、おばあちゃんは亡くなりました。
 私たちは遺言がなされていることを前提として、直ちに法定相続に基づく共有登記をすることにし申請をしましたが、遺言書に基づく兄の単独所有登記が一日早くなされ、すぐに第三者に所有権移転されてしまうというバブル時代当時の乱暴な結末をたどったのです。
 おばあちゃんが幸せであったのかどうかについては最後まで確信がもてないまま、事件としては遺留分の減殺請求訴訟で終わりました。

(3)身上監護はどうなるのか
第二例目は、財産もあったが債務も多く、身体障害者で高齢になったため多少意思能力に問題がでてきた相談者の事例です。
 配偶者はおらず、兄弟は借金の方が多いと判断しており、相談者の仕打ちにも怒っておりましたので誰も面倒をみる者がいない状態でした。
 仕方なく弁護士が財産を整理して整理後の財産を管理し、相談者を老人ホームに入れる世話までしたという事例です。
 相談者の兄弟は相談者に対して恨みまでもっておりましたので、一切協力もなく、とりあえず弁護士が介護用の車を購入して相談者の面倒を看ました。
 この車がエスティマであったため、弁護士が業務として金融機関に借入の申込みをしたところ、弁護士の乗る車でない(ベンツなら良かったらしい)といって借入が円滑にできなかったという落ちまでついた事件でした。
 しかし債権・債務の財産整理をして多少の金銭を確保し、相談者を老人ホームに入れるまで弁護士が世話をしたという当時では気苦労の多い事件でした。

       (以下次号に続きます)                             

 

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