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突然親族の残した借金の請求が来たら

2018年11月30日 コラム

 相続の場面において、亡くなった被相続人には遺産らしい遺産がない一方、多額の負債があるという場合、家庭裁判所に相続放棄の手続を申請することで(法律上は相続放棄の申述といいます。)、負債が引き継がれるのを免れることを選択することが多いと思います。

 相続放棄は、相続の開始があったことを知ったときから、原則として3ヶ月以内という比較的短い期間の内にしなければならないとされています(民法915条第1項)。借金に苦しんでいる親を看取ったというような場合は、速やかに手続をとることができますが、実際にはそのような場合ばかりではありません。債権者から督促が来るなどして、疎遠になっていた兄弟が亡くなっており、自分が相続人であることがわかったという場合や、3ヶ月以上前に亡くなった親に借金があることがわかったという場合もあります。

 3ヶ月という期間は、自分のために相続の開始があったことを知ったときから始まるとされており、これは相続開始の原因となる事実があったことを知り、かつそのために自分が相続人となったことを知ったときであると考えられています。前者のような場合は、兄弟が亡くなったことを知ったとき、あるいは亡くなった兄弟に子どもがいるなど先順位の相続人がいたものの、先順位の相続人が相続放棄をして次順位である自分が相続人となったことを知ったときなどから3ヶ月の期間が始まると考えられますので、特に問題なく放棄ができるということになるでしょう。

 問題は後者のような場合で、親が亡くなったことを知ったときから3ヶ月以上経っているとすると、民法の条文をそのまま読む限りは、もはや放棄はできないということになりそうです。しかし、相続の開始があったことを知ったときについて柔軟に解釈する最高裁判例(最高裁判所昭和59年4月27日判決最高裁判所民事判例集38巻6号698頁)があるため、家庭裁判所は、債権者から督促を受けて初めて被相続人に負債があることを知ったというような場合には、そのときから3ヶ月が経過していなければ、放棄を受け付ける傾向にあり、実際には放棄の手続ができるという場合が少なくないと思われます。 相続放棄について規定した民法の条文は必ずしも複雑なものではありませんが、実際に放棄ができるかどうかの判断は意外に難しいところがあります。迷ったときは、ぜひ弁護士に相談してみてください。

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