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夫婦同姓についての最高裁大法廷判決

2016年03月03日 コラム

【夫婦同姓についての最高裁大法廷判決】

最高裁大法廷は、平成27年12月16日、夫婦同姓を定めた民法750条の規定について、合憲と判断した。

〇裁判官10人の合憲の理由は、姓名は、個人を識別し、特定する機能を持つと同時に人が個人として尊重される基礎であり、憲法13条が保障する人格権の一部を構成する。民法の規定は、姓は、個人の呼称としての、また家族の呼称としての意義がある(夫婦同氏、親子同氏)。こうした姓の性質を鑑みると、婚姻の際に「姓の変更を強制されない自由」が憲法上の権利として保障される人格権の一部とは言えず、憲法13条違反ではない。
 しかし、姓を改める者がアイデンティティーの喪失感を抱いたり、他人から識別される機能を阻害されたり、個人の信用、評価、名誉感情などにも影響が及んだりするのは否定できない。近年不利益を被る者が増えているが、姓の通称使用が広まることにより不利益は一定程度緩和されうるとする。

〇しかし、女性裁判官⒊人を含む5人の違憲の理由は、婚姻の際、意思決定の過程で女性の約96%が夫の姓に変更している。その要因が女性の社会的・経済的立場の弱さという現実の不平等と力関係にある。女性の社会進出により、姓による識別の重要性は大きい。その点に配慮しないまま夫婦同姓に例外をもうけないことは個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とは言えないとする。
 事実、姓の変更で個人の識別、特定に困難を引き起こす事態が生じ、婚姻前の姓使用の合理性と必要性が増している。別の姓使用することを全く認めないことに合理性はない。個人の尊厳と両性の本質的平等に照らし合理性を欠き、憲法24条違反である。

〇ところで、姓の通称使用の実情は、自治体や大学、大手企業で「内部文書」での旧姓使用を認めるようになったが、「公文書」を作る場合は、戸籍上の姓で署名捺印しなければならないという。使い分けが煩わしく、不便である。それに、まだ多くの中小企業は通称使用を認めていない。公的機関を利用する場合や、銀行口座や健康保険証なども戸籍上の姓である。姓の通称使用が広まることにより不利益は一定程度緩和されうると言うけれど、これが実情である。

〇中には、事実婚(内縁)を選択する女性もいるが、事実婚は、法律婚に比べると、法律上明らかに不利益である。まず、夫婦関係に関し、子の嫡出の推定(民法772条)が認められないから、子と法律上の親子関係には認知が必要(民法779条)となる。次に、税制は、徴税の便宜を図るため画一的に法律婚を採用しているため、事実婚(内縁)が特別に規定されている事項以外は、配偶者に適用される規定は適用できない。所得税では、 配偶者控除、配偶者特別控除、寡婦控除の配偶者とは認めない。贈与税では、婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭を贈与しても、配偶者控除(2000万円)はなく、110万円基礎控除のみである。相続税では、法定相続人ではなく、基礎控除も、また配偶者の税額軽減(1億6000万円又は配偶者の法定相続分相当額)を受けることもできない。それどころか相続税は2割増しとなる。

〇このように、夫婦同姓が、姓の通称使用が広まることにより不利益は緩和されうるとは言え、個人の尊厳と両性の本質的平等に照らし合理性を欠いていると言わざるをえない。婚姻した女性が不利益を被らない最善の方法は、姓を維持したまま結婚する自由が認められる選択的夫婦別姓制を採用することにつきると思う。

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