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 被保険者が死亡する前に、生命保険受取人が死亡していた場合の保険金受取人

2016年01月06日 コラム

被保険者が死亡する前に、生命保険受取人が死亡していた場合の保険金受取人

1.相続では、生命保険の死亡保険金がよく問題となります。
  生命保険の保険金が相続財産と考えられていないことは、ご存知の方も多いかもしれません。相続
 とは、被相続人(亡くなった方)に属していた権利義務を相続人が受け継ぐ、というものであるとこ
 ろ、保険金の受け取りは、保険金受取人の下で固有に発生する保険金請求権に基づいてなされるもの
 であって、被相続人に発生した保険金請求権を保険金受取人が受け継ぐわけではない、と考えられて
 いるためです。

2.では、被保険者が死亡して死亡保険金が発生したときに、被保険者の死亡よりも前に保険金受取人
 が死亡していた場合には、保険金は誰がどのような割合で受け取ることになるのでしょうか。次の事
 例で考えてみたいと思います。
  保険契約者及び被保険者は夫のAさん、保険金受取人は妻のBさんとする生命保険契約で、Aさんが
 死亡しました。しかし、Aさんが死亡する1年程前に、すでにBさんが死亡していました。AさんとB
  さ
んとの間には子供はおらず、AさんとBさんのそれぞれの両親はすでに他界しており、AさんにはX
 
さんという兄が、BさんにはYさんという姉が居ました。
  さて、この事例で、死亡保険金は誰が受け取ることになるのでしょうか。

3.この点、当該生命保険契約にこの点を定めた約款があればそれに従うこととなりますが、その規定
 がない場合には、保険法第46条「保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人
 の全員が保険金受取人となる。」との規定に従うこととなります。そして、この条文にいう「その相
 続人の全員」とは、保険金受取人として指定された者の法定相続人または順次の法定相続人であって
 被保険者の死亡時に生存する者をいう、と解されます(最高裁平成5年9月7日判決。この判例は、
 保険法46条と同趣旨の規定である、保険法施行前の旧商法676条2項の解釈が争点となったもの
 ですが、保険法46条も同様に解釈されると考えられます。)。
  そうすると、保険金受取人であるBさんの法定相続人は誰かといえば、配偶者であるAさんと、姉の
  Yさんです。そして、Aさんはお亡くなりになっているので、Xさんが順次の法定相続人となりますの
 で、結局、XさんとYさんが保険法第46条により保険金受取人となります。

4.では、次に、XさんとYさんの保険金受取割合はどうなるのでしょうか。配偶者Aさんの法定相続割
 合である4分の3をXさんが引き継いで、Xさんが4分の3、Yさんが4分の1になるようにも考えら
 れます。
  この点、上記平成5年の最高裁判決は、保険金請求権は保険金受取人の固有の権利であることを理
 由に、複数の保険金受取人がいる場合の権利の割合は、法定相続割合とするのではなく、権利が共有
 関係にあるものとして、民法427条「数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表
 示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。」
 との規定によって、平等の割合で権利を取得するものと判示しました。
  従って、上記事例では、XさんとYさんがそれぞれ2分の1ずつの割合で保険金を受け取ることとな
 ります。

  このように、相続における保険契約については、複雑な法律問題が生じますので、早期に弁護士に
 ご相談されることをお勧めいたします。

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