弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

財産目録を作りましょう!

2013年08月01日 その他

あなたは、現在、自分がどんな財産をどのくらい持っているか、正確に把握していますか?

財産というのは、不動産や預貯金だけではありません。株式などの有価証券、生命保険、投資信託、ゴルフ会員権、ファンドへの投資、組合出資…。住宅ローンや自動車ローン等の負債もマイナスの財産ですので、「財産」に含まれます。連帯保証をしていたら、それも負債の一種です。

 大丈夫、自分のことだから、だいたいのところは分かっている、という方は多いと思いますが、では、ご家族名義のものも、正確に把握されていますか?また、概要が分かっていても、権利証や、通帳、証券類について、いざというとき、家捜しをしなくとも、すぐに出てきますか?どの印鑑がどの銀行口座の取引印か、すぐに分かりますか?

 私ども弁護士が、財産の内容についてお尋ねするのは、主に、離婚事件のときと、相続事件のときです。

 私の経験では、男性の相談者に多いのですが、離婚の法律相談で、財産分与の話になり、夫婦の共有財産について伺うと、ご自身名義の預貯金でさえ、どの銀行にいくつ口座があるか確かでない方がおられます。まして、生命保険や簡易保険、共済保険の有無や内容、契約関係になると、奥様が管理されているので分からない、住宅ローンも、借り入れはしているが、現在の債務残高が分からない…。

 配偶者名義や子ども名義の預貯金となると、全く把握されていない方も、比較的多くいらっしゃいます。そういった場合、夫婦の共有財産の正確な把握ができず、的確な助言ができない可能性があります。

 離婚手続では、財産分与の対象となるべき夫婦の共有財産を相手方が管理しているときでも、その財産の概要(例えば、○×銀行の××支店に口座があるなど)が分かっていれば、詳細(別居時の預金残高等)について開示を求め、場合によっては金融機関に残高証明書の発行を依頼するなどして、共有財産の総額を確定する作業が可能ですが、どこにどんなものがあるかの手がかりがないときは、相手方が不存在を主張すると、反論の材料がなく、どうしようもありません。裁判所が夫婦それぞれの財産を探索して財産目録を作ってくれるようなことは、離婚の裁判では、ないと思っておいて下さい。

 「あの保険の満期金がどこかに貯めてあるはずだ。」というお話をときどき伺うのですが、「どこかに」では、どうしようもないことが、多いのです。

 また、相続手続のときにも、財産の内容が不明だと、非常に困ります。

この頃は、老夫婦だけの世帯や、60代の息子が1人で80代の老母の世話をする世帯などの話を聞くようになりました。

これも、私の見聞きした事案ですが、60代の未婚の男性が、母一人子一人で、病身の80代のお母さまのお世話をしていたのですが、お母さまを老人ホームに入居させたとたん、安心したのか、急に亡くなってしまいました。

近くに親戚がいないので、会社の同僚が手配して、なんとか葬式は済ませたのですが、その後の手続がすすみません。いざというときのために生命保険に加入しているとは聞いていたらしいのですが、保険証券がみあたらず、保険会社が分からず保険金がすぐに受け取れない、また、お母さまの老人ホームの月額支払いはどうすればいいのか分からない、どこにどんな財産があるのか全く分からない…。親戚が、自宅を訪問して、貴重品らしきものを探したのですが、思うようなものがみあたらず、遺言書もありません。貴重品が見つからないので、どこか他に保管しているのかとも考えたらしいのですが、貸金庫を借りていたのか否かも分からない…。確定申告をしていたはずなのに、その写しもみあたりませんでした。

結局、この事案は、お母さまの財産管理をする代理人が選任され、相続のための事務処理も行ったのですが、取引がありそうな金融機関複数に問い合わせをするなど、なかなか大変な様子でした。

このようなときにも、目録が作ってあって、自分の財産(プラスの財産とマイナスの財産)が整理されていれば(更に言えばそれぞれの権利証、通帳や証券が整理されていれば)、速やかに必要な手続きをとることが可能になります。残された遺族は、様々な手続に追われ、故人の遺産を整理したり、必要な貴重品を探すことが負担になることもしばしばありますので、財産目録があれば、このような不要な負担が減らせるともいえます。

もちろん、財産目録を整備していれば、遺言書を書くときにも、助けになります。

是非、財産の目録を作って、それと同時に、権利証や、証券類の保管場所を今一度確認しておくことを、お勧めします。

                                    以 上

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