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祭祀財産承継者に係る紛争

2010年03月01日 その他

本コラムにも、以前、祭祀承継に関する記事が掲載されたことがありますが、祭祀財産の承継者に係る紛争が良く見られますので、今回は、少し詳しく御紹介いたしましょう。

民法897条1項では、「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、・・・慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者がこれを承継する。
但し、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が、これを承継する。」と規定されております。
系譜とは家系図、祭具とは神棚、位牌、仏壇等であり、また、墳墓とは、墓石、墓地であります。

民法の上記規定により、祭祀財産は、一般財産と異なり、分割承継されずに、単独承継されることになっております。
そして、祖先の祭祀を主宰すべき者は、第一次的には被相続人の指定によって定め、第二次的には地方の慣習によって定めることになりますが、それでも定まらないときには、家庭裁判所の審判によって定められます。
裁判所は、被相続人の生前における意見や地方の慣習だけでなく、死者たる被相続人に対する慕情、感謝の心情等をも考慮して祭祀主宰者を定めることになると、一般に言われております。
また、親族であることや氏を同じくする必要はないと解されております。

地方の慣習が明らかでない場合だけでなく、慣習の内容について争いのある場合も裁判所で定めることになりましょう。

なお、被相続人の指定については、被相続人の明示的指定がなくても外部的にその意思が推認されるものがあれば足りるとされております。
   最近の紛争の事例としては、祭祀財産承継者が高齢の場合に承継者と認められるかについて正反対の結論を出した裁判例があります。

まず一つは、平成19年10月31日付けの東京家庭裁判所における判決であります。

この事案は、被相続人の妻と長男が争った事案でありますが、被相続人死亡後、被相続人の位牌等はすべて被相続人の妻が管理していること、祭祀を主宰する意思の堅固性及び継続性等を考慮すると、高齢(筆者中…当時92歳位であったと思われます。)であることを考慮しても、被相続人の妻が承継者として最も適任であるとして、裁判所が、被相続人所有の系譜、祭具及び墳墓の承継者を妻と定めた事例です。

もう一つは、平成19年2月5日付けの福岡高等裁判所の決定であります。

この事案は、被相続人の実母と被相続人の実子が争った事案でありますが、裁判所は、祭祀の将来的な継続性という観点からすれば、すでに高齢の実母よりも実子の方が優っているのは明らかであるとして、祭祀承継者として長男を指定しました

当事者間の年齢差を見てみますと、最初の事案の場合は、親子間の年齢差ですが、二番目の事案は、祖母と孫間の年齢差ですので、このことが効いたのでしょうが、もう一つの理由は、決定でも述べておりますが、二番目の事案ですと、祖母亡き後は、承継者は孫たる被相続人の実子にはならず、祖母の長男(被相続人の兄)になり、以後その子孫が承継者になりますので、裁判所はこのことも祖母を承継者と認められない理由に挙げております。

世の中には、以上のケースだけでなく、祭祀承継に関するいろいろな問題があります。問題があれば、いつでも、弁護士会の家庭法律相談センターに御相談下さい。

                    以上

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