弁護士コラム~家事事件の現場から~家庭に関する法律相談を担当した弁護士がリレーでコラムを執筆しています。

これも家庭裁判所の事件・・若い頃の苦い思い出(不在者の財産管理に関する事件)

2009年05月01日 その他

                            

《めずらしい相談》

相談者は、20数年前に自宅(土地建物)を購入したということでした。
売主は宅地開発され分譲されたときから住んでいた人で売却された後はどこかに引越をされ現在どこに住んでいるか判らない、当時相当な年齢でしたので現在はなくなられているのではないかということでした。
この度自宅を売却しようと思い不動産屋に相談したところ、自宅への進入路となっている私道はそれぞれ細切りに分筆され宅地所有者が交互に所有することになっているが、その中に相談者の名義の土地はなく、相談者のものと思われる土地の名義は売主のままになっている、このままでは私道に何らの権利もないことになり売却することができないといわれて大変驚きました。
売買契約書をよく読んでみたところ自宅部分の土地は記載されていましたが、私道部分の土地は記載されていませんでした。
売買契約のとき、私道についての説明はなかったように思いますが、この私道が唯一の進入路ですので、私道についての何らかの権利は当然あるものだと考えていたということでした。
しかし、不動産屋の説明だと名義が変更され私道がなければ自宅を売却することが出来ないということですのでどのようにすればよいでしょうか、という相談でした

《安易な受任》

この事件を取引の相手方の所在がわからなくなった事件だと安易に考え引き受けることにしました。
まず最初に考えられるのは売主か又は売主の相続人を捜し出すことですが、既に住所を移転してから20年以上たっているので住民票又は除票など関係する資料はすべて廃棄されており、この資料から売主の移転先や本籍地を探すことができない、住所や本籍地がわからない以上売主や売主の相続人を捜し出すことはできない、ということが判りました。
次に考えたのは所有権移転登記を求める相手方の住所や居所がわからないというとことで公示送達の方法を使って訴訟を起こし、判決によって所有権移転登記(名義変更)ができるのではないか、ということでした。
しかし、売買契約書には、売買の対象となる土地は自宅部分の土地しか表示されていませんので、売主の私道部分の土地を含めて所有権を移転する約束があったといえるかどうか、相手方が裁判に出てこない公示送達の手続において、黙示の約束があったといえるか疑問が出てきて、公示送達の方法によって訴訟をおこしても難しいのではないかと考えられました。
ここまで考えて、これまでの自分の知識や経験ではこれ以外の手続を思いつかず、頭脳は停止状態となってしまいました。
友人の弁護士に相談しましたがよい意見はなく、ハムレット状態となってしまいました。

《一筋の光明》

悶々とした状態が続いていましたが、突然閃くものがありました。
売買契約の相手方ということで取引に関する民事事件だという先入観から解決の方法が見つけられない、単純にある人が財産を残して行方不明となったと考えればよいのではないか。受験時代に教科書で読んだ記憶がよみがえってきて、教科書等を読み返してみると不在者の財産管理人の制度があり、財産管理人の選任と裁判所の許可を受ければ名義変更できることが判りました。
なんとその裁判所というのは家庭裁判所だというのです。
そして、財産管理人の選任と許可の申立を行い、家庭裁判所に売買契約の経緯などを説明したところ無事許可を受けることが出来、この事件は解決しました。

不動産取引のトラブルの解決に家庭裁判所が関与することもあるのです。

                       以上                                                                            

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